繊維の高機能化を実現するマイクロ波処理技術を開発―抗菌医療用シーツや防臭性の衣服、難燃性カーテンなどに利用:産業技術総合研究所
(2020年1月21日発表)
(国)産業技術総合研究所マイクロ化学グループの宮沢哲 研究グループ長のチームは1月21日、中空構造を持った繊維の内側に機能性微粒子や結晶を導入し、マイクロ波で加熱することによって合成することに成功したと発表した。繊維のもつ風合いを保ちながら、摩擦などの劣化にも強い高機能の繊維作りが可能になる。
スポーツウエアや医療用シーツなど繊維の高機能化は日々進歩している。これまでのように製造過程で混ぜ合わせたり製造後の繊維に微粒子や結晶を注入する方法では、風合いを壊したり摩擦などで劣化する問題があった。
産総研では、綿(コットン)など中空のある繊維を利用し、ナノ粒子の入った原料溶液に漬け、次に脱気や加圧によって溶媒を繊維の中空部に浸透させた。そしてマイクロ波の周波数を調整しながら原料溶液を加熱し、繊維の中空部に必要な粒子や結晶を合成させることに成功した。
天然の綿の中空部分に抗菌作用のある銀ナノ粒子を合成したものを走査型電子顕微鏡(STM)で元素分析したところ、綿表面よりも中空雨部分の表面に銀ナノ粒子が合成されていたことを確認した。
中空構造さえあれば天然繊維、合成繊維を問わず適用できる。また機能性微粒子はゼオライトのような無機結晶でも、薬効のある有機結晶でも、導電性粒子でも多くの粒子が使えることを確かめた。
研究チームは製品応用として、医療分野では抗菌・防カビのあるシーツが、生活分野では防臭性や調湿性のある衣類、また住宅分野では難燃性カーテン、農業分野では防虫性ネットなど幅広い応用が可能と見ている。