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高齢運転者の「認知機能検査」導入後も高齢弱者の死傷が増加―全国で発生した交通事故のデータ分析で明らかに:筑波大学

(2020年1月29日発表)

 筑波大学は1月29日、高齢運転者への「認知機能検査」導入後も高齢交通弱者の死傷が増加していたことが分析の結果判明したと発表した。(公財)交通事故総合分析センターから得た交通事故データを使って認知機能検査が導入された2009年6月からの3年間の変化を統計的手法で調べたところ分かったという。

 高齢者の安全な交通手段の確保は世界的な課題。中でも高齢化が著しい日本では75歳以上が占める交通事故の割合が増え続けている。

 このため、その対策の一環として75歳以上の運転者に義務付けられたのが認知機能検査で、認知症と診断されたら免許停止か取り消しになるようになった。

 高齢運転者対策としての運転免許更新時の認知機能検査は、日本だけでなく海外でも実施され、検査の効果検証も既にデンマークで行われている。

 今回の研究は、そうした背景のもと日本での導入の影響はどうなのかその検証を行おうと実施したもので、交通事故総合分析センターから得た月ごとの全国の交通事故データを用いた。

 データは、70~74歳、75~79歳、80~84歳、85歳以上、で分けられ、原付以上、自転車、徒歩のいずれだったかや重傷度が集計されていて、「分断時系列解析」と呼ばれる統計的手法を使って分析した。

 その結果、認知機能検査の導入が開始された2009年6月から2012年5月までの3年間に75歳以上の高齢交通弱者(自転車や歩行者)の死傷率が、75~79歳の女性で7.5%、80~84歳の女性で9.3%それぞれ増え、3年過ぎた2012年6月以降も80歳以上の男性と85歳以上の女性で増加していたことが分かったという。

 このことから「2009年に導入された認知機能検査は、高齢運転者の事故を減らすという当初の目的を達成していない一方、高齢交通弱者の交通死傷を増やすという意図せぬ副作用をもたらしたことが明らかになった」と筑波大の研究者は評価。認知機能検査の運用が2017年3月から変更されていることから、その変更が高齢交通弱者の交通事故・死傷の発生にどのような影響を与えているかを今後さらに検討する必要があるといっている。