3次電池の電極に相転移物質を使い高電圧化を達成―室温付近の環境熱を活用しIoT機器に電力供給へ:筑波大学ほか
(2020年2月6日発表)
筑波大学と群馬工業高等専門学校の研究グループは2月6日、身の回りの環境熱によって充電できるタイプの電池システムを作り、13℃から47℃への昇温により約120mVの起電力を得たと発表した。今後の材料設計により、起電力の大幅な向上が期待されるとしている。
電力によって充電される電池を2次電池と呼んでいるのに対し、環境熱によって充電される電池は3次電池と呼ばれている。3次電池は室温付近の環境熱を活用して充電できる自律分散型の電源で、今後広く普及・浸透が見込まれているIoT機器用電源としての利用が期待されている。昼夜、あるいは日向と日陰、空調のオンとオフ時などの温度変化を電力に変換できる。
この開発に取り組んできた研究グループは、今回、電極材料に相転移物質を活用することにより、これまでは13℃から47℃の温度変化でわずか39mVでしかなかった起電力を、120mVに高めることに成功した。
使用した相転移物質は、コバルトプルシャンブルー類似体のNCF82とNCF90の2種で、これらをインジウム錫(すず)酸化物(ITO)透明電極上に製膜、NCF90を正極、NCF82を負極、NaClO4水溶液を電解液とするビーカーセル型の3次電池を作製した。
これを13℃から47℃に昇温したところ、理論効率の11%に相当する0.9%の熱効率で、約120mVの起電力を得た。
研究グループは、「物質の酸化還元電位は相転移の前後で不連続に変化するので、相転移物質を電極に使用した3次電池では起電力が増大する」と考え、それによって得られた成果と説明している。
相転移材料の今後の設計・開発により、起電力の巨大化が期待されるという。