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生物大量絶滅は大規模酸性雨により引き起こされた―巨大隕石衝突後の地球環境激変の証拠を発見:筑波大学ほか

(2020年2月14日発表)

 筑波大学生命環境系の丸岡照幸准教授と高知大学農林海洋科学部の西尾嘉朗准教授らの研究グループは2月14日、巨大隕石衝突による環境激変で大規模な酸性雨が実際に発生していた証拠を見つけたと発表した。隕石衝突による恐竜絶滅の原因には様々な議論が出ているが、大量の酸性雨が直接の原因になった可能性の証拠を示したのは初めて。京都大学、(国)海洋研究開発機構、(国)日本原子力研究開発機構、(国)量子科学技術研究開発機構、(公財)高輝度光科学研究センターによる共同研究となった。

 約6,600万年前の白亜紀と古第三紀(K-Pg)境界期に、メキシコ・ユカタン半島に衝突した直径約10Kmの巨大隕石が引き金となり、恐竜や軟体動物アンモナイトを含む約70%の生物種が絶滅したとみられる。

 絶滅の直接の原因として「太陽光遮断」や「酸性雨」、「温暖化」、「紫外線透過」などの環境激変が挙げられているが、実際にどのようなメカニズムで発生し、何が生物相に最も影響を与えたかが不明だった。

 隕石衝突仮説は、K-Pg境界層にイリジウムなど金属鉄に取り込まれやすい元素(親鉄元素)が高濃度で存在することから提案された。これらの元素は地球表面層の岩石にはほとんど無く、隕石に多く含まれているため、隕石由来の物質がばらまかれたことを意味する。

 研究チームは、デンマーク海岸沿いの断崖から採取したK-Pg境界層の「親鉄元素」を放射光分析にかけた。その結果、酸性雨によって生成されたと考えられる銀や銅が高濃度に含まれる微粒子が、それぞれ独立に存在することが明らかになった。銀や銅は酸に溶けやすい元素で、大陸から溶け出し大量に海洋に流れ込んだことを意味する。

 酸性雨のでき方は2通りある。衝突で地層から飛散した石灰岩、蒸発岩が、衝突の加熱によって二酸化炭素(CO)や三酸化硫黄(SO3)ガスになり、雨水に溶けて硫酸酸性雨になる。もう一つは衝突で弾かれた破片岩石が再び落下中に加熱されて一酸化窒素(NO)になり、最終的に硝酸酸性雨になる。いずれも強酸性の雨だ。

 酸性雨で溶かされた銀や銅は、河川を通じて海洋に流入し、有機物などに取り込まれる。一方、隕石に起因するイリジウムなどは、地上に衝突したあと加熱によって気化し、再び冷却されて固体になり海洋底の堆積物に取り込まれた。

 銀や銅の濃度とイリジウム濃度とが高い相関関係にあることから、銀や銅の凝集は隕石衝突と同時期だったことが分かった。デンマーク以外のK-Pg境界層の試料にも、同様の化学分析によって酸性雨の規模や継続時間を定量的に明らかにできるとみている。またK-Pg境界層以外で起きた生物大量絶滅にも、親銅元素の異常濃縮が見つかっており、大量絶滅と巨大隕石衝突との精緻な議論が進むものと期待されている。