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鉄腐食細菌は黒サビを使い腐食を加速させている ―細菌による鉄の腐食を防ぐ新たな道見つける:物質・材料研究機構ほか

(2020年2月14日発表)

 (国)物質・材料研究機構は214日、鉄腐食細菌は「黒サビ」を使って腐食を加速させていることを発見したと発表した。細菌表面の超微細な硫化鉄を主成分とする黒サビのナノ粒子を詳細に分析して分かったもので、細菌による鉄腐食を防ぐ技術の開発を目指してさらに研究を進めるという。

 研究は、オーストラリア連邦研究所、(国)理化学研究所と共同で行った。

 微生物と鉄との相互作用はなかなか複雑で、現象を十分には説明できていない。鉄腐食細菌が排泄する硫化水素が鉄と反応すると脆(もろ)くて黒い錆(さび)、いわゆる黒サビができて腐食が進む。何故腐食は止まらずに進むのか。様々なメカニズムが提案されて物理化学の観点から議論が続いている。

 物材機構・理研の共同研究グループも、鉄の腐食を進行させる細菌が鉄から電子を引き抜く酵素群を持っていてそれが鉄の腐食を加速させていることを見つけたと2018年に発表している。ただ、その酵素を持っていない硫酸還元菌でも高い鉄腐食能を持つ場合があることからさらに研究を進め今回の発見に行き着いた。

 黒サビの実体である硫化鉄のナノ粒子(1ナノメートルは10億分の1m)が細胞の表面や内部で生合成されていることはこれまでも分かっていた。しかし、測定の難しさからその結晶構造などの物性情報は不明だった。

 研究では、先ず鉄腐食細菌の細胞膜の表面に付いている硫化鉄ナノ粒子の結晶構造の観測に取り組み、高解像度な電子顕微鏡を使って観測に成功、細菌表面の硫化鉄が導電性のあるナノ粒子であることを突き止めた。

 そこで、さらにその細菌表面の導電性硫化鉄ナノ粒子が細菌を電気細菌化するかを調べた。電気細菌とは、細胞外にある電極から電子を受け取る能力を持っている細菌のことで、鉄から直接電子を引き抜いて鉄の腐食を加速させる細菌として注目されている。

 すると、導電性の硫化鉄ナノ粒子、つまり黒サビのナノ粒子を表面に持つ鉄腐食細菌は、電極から電子を引き抜いたことを示す電流が観測された。それに対し、硫化鉄ナノ粒子を表面に持たない細菌ではその電流が生じないことが分かった。

 研究グループは、この結果について「黒サビの持つ導電性を使って細胞外部から体の中へと電子を取り込み、エネルギー源として活用していることを示している」とし、鉄腐食細菌が黒サビを利用して腐食を加速させていることを実証したといっている。