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有機半導体の材料特性を簡便に予測する手法を開発―単結晶の作製やX線構造解析など不要に:筑波大学ほか

(2020年2月17日発表)

 筑波大学とコンフレックス(株)、豊橋技術科学大学、東京大学の共同研究グループは2月17日、有機半導体材料の研究開発にとって重要な指標となる電荷移動度などを簡便に予測できるシミュレーション法を開発したと発表した。有機半導体開発の効率化、低コスト化が期待されるという。

 有機半導体は、印刷方式でフレキシブルな薄膜電子回路を形成できることから次世代電子材料として盛んに研究されている。しかし、高性能な材料探索には候補分子の合成や、単結晶の作製、トランジスタの作製、移動度評価など何段階ものステップを経なければならず、多くの時間と労力を要している。

 共同研究グループは、材料特性の予測にかかる時間を削減し、材料開発プロセスを効率化することを目指し、今回、単結晶の作製やX線結晶構造解析実験を不要とする材料特性予測のシミュレーション法を開発した。

 開発したのは、分子の化学構造式と粉末X線回折パターンから、単結晶構造と移動度を短期間で予測する手法で、一分子の化学構造式から、分子集合体である有機半導体の移動度などを迅速に高精度で予測できる。

 筑波大学が開発してきた移動度の大きさと温度依存性を迅速に予測する大規模量子伝導シミュレーション法と、豊橋技科大学とコンフレックスが開発してきた結晶構造予測シミュレーション法に、粉末結晶のX線パターンを利用した新しい評価法を組み合わせ、予測精度の向上と予測時間の短縮化を実現した。

 今後さらなる効率化や精度向上を進め、利用を促進したいとしている。