パーム油を採り終えた古木の資源化に道開く―マレーシア理科大学との共同研究で課題を解明:国際農林水産業研究センター
(2020年2月21日発表)
(国)国際農林水産業研究センターとマレーシア理科大学の研究グループは2月21日、共同でパーム油を採り終わったオイルパーム古木中の炭水化物量を変動させる気候要因を解明したと発表した。パーム油が採れるオイルパームと呼ばれる植物の栽培で発生する古木の有効活用はオイルパーム栽培国にとっての課題、その道を開くのに役立つことが期待される。
オイルパームはヤシの一種。別名をアブラヤシといい、高さが20m以上にもなって先端部近くに果房(かぼう)と呼ばれるブドウのような房状の実が多数実る。その果房の油分を絞り採ったのがパーム油で、食品に幅広く使われ、世界で採れる植物油の中で最も量が多く約40%を占めるほどで、その内の85%がマレーシアとインドネシアで生産されている。
植えてから5年ほどで搾油できる果房が得られるようになるが、オイルパームには寿命があり、だんだんと搾油量が減ってくるため25年余りで伐採されている。
その不要になったものがオイルパーム古木。しかし、高さが20mを越すほどの幹の内部には光合成によって生合成された遊離糖やデンプンなどの炭水化物を含んだ樹液がまだ貯蔵養分として残っている。これを非構造性炭水化物と呼ぶが、多くの古木はそれが利用されぬまま伐採されて農場内に放置されている。
だが、オイルパーム古木の年間発生本数は何千万本にも達することからバイオガスやバイオエタノールなどを得るための有力なバイオ資源になると大きな期待がかけられ、それに向けて樹液の糖分の変動要因の解明などが求められている。
そこで今回研究グループは、古木の幹の中に蓄えられる糖などの炭水化物と気温・雨量との関連性の解明に取り組んだ。
研究は、マレー半島北部の農園で2012年の10月から2016年3月にかけ植えて20年以上経過したオイルパーム古木中の遊離糖とデンプンの量、果房の容積を毎月計測、近隣の気象測候所で観測されたデータから算出した積算温度、積算雨量との関係を経験的動態モデリング手法と呼ばれる評価方法を使って解析した。
その結果、積算温度が低い時期に遊離糖とデンプンの量は増え、積算雨量の増加と共に遊離糖やデンプンの量が増加するという気候関連性があることを見つけた。
研究グループは、この結果からマレー半島北部では果房量が少なく積算温度が低下し積算雨量が増加する10月から12月にオイルパーム古木中の遊離糖量やデンプンは増加するという結論が得られたとし「この時期に伐採を行うことで非構造性炭水化物の含有量の多いパーム古木を収穫できることが分かった」と話している。