微生物から薬効もつ新酵素―高価なヒト酵素の代替も:国際農林水産業研究センターほか
(2020年2月27日発表)
(国) 国際農林水産業研究センターと(株)ペプチド研究所は2月27日、秋田大学などと共同で微生物から血圧降下や心不全改善などの効果がある酵素を発見、大量生産することに成功したと発表した。ヒト由来の酵素ではこれらの改善効果を持つものが見つかっているが量産化が難しく、微生物由来の代替酵素が求められていた。
微生物から発見したのは、ヒトの細胞で作られるアンジオテンシン変換酵素2(ヒトACE2)とよく似た働きを持つ酵素「B38-CAP」。ほ乳類と微生物が持っている酵素は、進化の過程でたんぱく質の立体構造などが大きく変化してきたが、酵素反応に必要な活性部位の構造は部分的に保存されていることがある。
そこで研究グループはこの点に着目、たんぱく質や遺伝情報に関するさまざまなデータベースを活用して、ヒトACE2の活性部位と同じ構造を持つ酵素を微生物「パエニバチラスB38株」から発見した。さらにその遺伝子を利用して大腸菌に大量生産させることに成功した。
試験管内で大量生産に成功した酵素「B38-CAP」の活性をヒトACE2と比較したところ、ヒトの血圧等調節ホルモンであるアンジオテンシンⅡを分解するなど、よく似た活性を示した。さらにマウスに投与したところ、ヒトACE2を投与した場合と同様に血圧降下や心不全の症状改善などの効果が見られたという。
今回の成果について、国際農研は「ヒトや動物の酵素を、起源の異なる微生物由来の酵素で代替できる可能性が示された」として、新しい機能性食品や医薬品の開発に応用できると期待している。