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高齢者に多い悪性リンパ腫の治療に有望な薬剤見つかる―マウスを使った治療モデル実験で効果を確認:筑波大学

(2020年2月28日発表)

 筑波大学は2月28日、高齢者で発症頻度が高い特定の悪性リンパ腫に、他の血液がんで使われている薬剤ダサチニブが治療薬として有望であることを見出したと発表した。国内多施設共同でダサチニブの効果を調べる医師主導治験を始めており、新たな治療法の開発につながる可能性が期待されるという。

 悪性リンパ腫はリンパ球の悪性腫瘍で、血液がんの一種。悪性リンパ腫には多数の亜型があり、今回の研究対象は「血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)」をはじめとする3種類の亜型をひとまとめにして「濾胞性(ろほうせい)ヘルパーT細胞リンパ腫」と呼ばれる疾患。悪性リンパ腫の約3-5%を占めるとされている。

 研究グループはこの7割において、RHOAと名付けられた遺伝子から作られるたんぱく質の1箇所に変異が起きていること、また、TET2という遺伝子にも変異が生じていることを2014年に見出した。

 さらに、RHOA変異によって生じた異常なたんぱく質がT細胞受容体シグナルに異常な活性化を引き起こすことや、ダサチニブによって一連の反応が抑えられることを2017年に見出した。

 そこで今回、濾胞性ヘルパーT細胞リンパ腫のゲノム異常(RHOA変異とTET2変異)を模倣するマウスを作製し、治療モデル実験を実施した。作製したマウスは疾患のモデルとなる腫瘍を発症、そこにダサチニブを投与したところ、生存の延長が認められた。

 また、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)の患者を対象にダサチニブの安全性確認を行ったところ、対象者5人のうち4人で部分寛解(かんかい)を認め、効果が確認された。これらの結果を受けて現在、医師主導治験を実施中。従来型の治療では治癒が難しい一部の悪性リンパ腫の新たな治療法開発につながることが期待されるとしている。