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新系統の渦鞭毛藻発見―葉緑体のゲノム進化解明に手がかり:筑波大学ほか

(2020年2月28日発表)

 筑波大学と(独)国立科学博物館、東北大学は2月28日、光合成に欠かせない葉緑体を植物などの真核生物が進化の過程で獲得した仕組みを解明する手掛かりを発見したと発表した。真核生物である単細胞藻類「渦鞭毛藻」の中から、細胞内に共生した緑藻が葉緑体に切り替わる途中段階の特徴を持った新系統2種を発見した。葉緑体の成立に伴うゲノム(全遺伝情報)進化の解明に役立つと期待している。

 光合成をする藻類には、細胞内に共生した緑藻や紅藻を葉緑体化した系統が複数あることが知られている。こうした緑藻や紅藻は宿主の細胞内に葉緑体のみを残して細胞の一部となるが、その遺伝的な統合過程は不明だった。

 これに対し今回、研究グループはその解明に役立つ2種類の渦鞭毛藻株(MGD株とTGD株)を発見した。その細胞の内部構造を詳しく調べたところ、葉緑体の周辺にDNAを包み込む核のような構造が見つかった。その中にDNAが存在していることを確認、それが新たに見つかった渦鞭毛藻の細胞内に共生した藻類由来の核の一部「ヌクレオモルフ(残存核)」であることが分かった。さらにどちらの渦鞭毛藻でも、その核ゲノムに共生した藻の遺伝子コピーが残っていた。

 研究グループは、新たに見つかった2つの渦鞭毛藻株について「共生藻が宿主細胞へ遺伝的に統合されていく中途段階に相当する生物だと考えられる」として、葉緑体確立プロセスを理解するカギになると期待している。