AI使って温州みかんの糖度予測する手法を開発―出荷時の糖度を収穫の数カ月も前に予測できる:農業・食品産業技術総合研究機構
(2020年3月6日発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構は3月6日、AI(人工知能)による温州みかん(うんしゅうみかん)の糖度予測手法を開発したと発表した。前年までに蓄積された糖度データと予測しようとしている年の気象予報データから一定の地区の温州みかんの出荷時の平均糖度を収穫の数カ月も前の7月頃から予測できるという。実用に耐える十分な精度を確認済みで、温州みかんの品質向上に役立つことが期待される。
糖度は、果物に含まれている糖分の濃度を示す代表的指標。果汁100g中に糖分が何グラム含まれているかを百分率で示した値のことで、たとえば、糖度10度といえば果汁100g中に10gの糖分を含んでいることを示す。
温州みかんは、柑橘類の中で最も収穫量の多い果物で、関東以西の沿岸地域で主に栽培されていて、年間の収穫量は農林水産省の「果樹生産出荷統計」によると2014年度時点で874,700t。
今回の研究は、農水省の「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」としてJAながさき西海(さいかい)と、長崎県の協力を得て行った
温州みかんの糖度は、10月頃に出荷される極早生品種で10度、年明け出荷の晩生品種で12~13度といわれ、1度違うだけで美味しさがかなり違う。
このため、早い時期から出荷時の糖度が予測できるようになればそれに対応した圃場への水の供給や施肥、摘果などが行なえ糖度の高い美味しいみかんになるように育てていく栽培が可能になる。
しかし、これまでに提案されている予測手法はいずれも糖度の誤差が1度程度あって十分な精度になっておらず正確な手法の開発が望まれている。
今回開発した手法は、コンピューターにデータを読み込ませ分析を行なわせるAIの技術を用いて出荷時の糖度を数〜数十の果樹園を単位にして前年の出荷時の糖度と当年の気象予報データ(気温、降水量、日射量、日照時間)から予測するというもの。
研究ではJAながさき西海から提供を受けた14の地区の出荷時の糖度データを利用してこの手法の検証を行った。
その結果、予測値と測定値は良く一致し、予測誤差0.47度という高成績が得られ、研究グループは実用上十分な精度が確認できたと見ている。
収穫の前に糖度が予測できれば、収穫作業や、出荷、販売の計画作りが容易になり、加えて今回の手法は数から数十の果樹園がグループで利用できるだけに実用化が期待される。