細菌毒素たんぱく質の膜透過メカニズム明らかに―毒素たんぱくと透過装置の複合体の構造を高分解能で決定:京都産業大学/大阪大学/筑波大学
(2020年3月10日発表)
京都産業大学と大阪大学、筑波大学の共同研究グループは3月10日、細菌毒素たんぱく質が細胞膜を透過するメカニズムの一端を解明したと発表した。細菌毒素たんぱく質と細胞膜透過装置とから成る複合体の構造解析に成功したもので、細菌毒素の膜透過を阻害する新薬の開発につながる成果という。
腸内細菌の一種で悪玉菌の代表例であるウェルシュ菌などが産生する二成分毒素は、毒素たんぱく質である酵素成分と、これを宿主の細胞に入れるための透過装置・膜孔から成っている。
透過装置によって形成される膜孔口径は非常に小さいので、3次元構造のたんぱく質はここを通過できず、毒素たんぱく質の酵素成分をこのトンネル内に通すには、3次元構造を壊し、酵素成分をアミノ酸が鎖状につながった1本の紐状物質にしなければならない。それがどのような仕組みで起きるのかはこれまで未解明だった。
研究グループは今回、ウェルシュ菌タイプEが産生するイオタ毒素と呼ばれる二成分毒素を対象に、毒素たんぱく質が3次元構造を失って膜を透過する仕組みを調べた。
まず、液体窒素温度下で電子線を照射し非染色で生体分子を観察できるクライオ電子顕微鏡を使って、毒素たんぱくと膜透過装置の複合体を観察、高い分解能で構造を決定することに成功した。
引き続き、酵素成分IaのN末端がIb膜孔の中で空間的な制約によって構造を失い、紐状になっている様子をつかんだ。こうした結果から、膜孔への結合が酵素成分の透過に不可欠な構造変化を引き起こすことを解明した。これらは細菌毒素に関連した創薬につながる成果という。