車載レーダー精度向上に新技術―電波干渉による性能低下防止:茨城大学
(2020年3月9日発表)
茨城大学の梅比良正弘教授らの研究グループは3月9日、自動運転車の普及に欠かせない車載レーダー用の新技術を開発したと発表した。自動運転車に搭載される複数のレーダー相互間で起きる電波干渉による性能低下を防ぐ技術で、検出精度の改善が期待できることを確認した。今後はさらなる検出精度の向上などを進め、実用的な自動運転車に組み込める車載レーダーの実現を目指す。
開発したのは、簡単な回路構成で検知対象物の距離や速度を同時に検出できるミリ波FMCW(周波数連続変調)レーダー向けの技術。自動運転車などではこのレーダーを複数台搭載して反射波をとらえ、車の前後左右にある対象物を自動検知することが期待されている。ただ、そのために搭載する何台ものレーダーの反射波が相互干渉を起こして誤動作してしまう確率が高まる問題があった。
これに対し、研究グループは「反射処理を用いた干渉検出・抑圧法」と呼ぶ新しい信号処理の計算手法を考案。この処理を繰り返すことで、反射波の相互干渉によって発生する雑音レベルを大幅に下げることに成功した。干渉によって発生する雑音のレベルを20db(デシベル)、すなわち100分の1低減できた。さらに24GHz(ギガヘルツ、1GHzは毎秒10億Hz)帯のミリ波FMCWレーダー3台を用いた実験でも、新しい処理法を適用して雑音が低減できることが確認できた。
自動運転車や高度運転支援システムは世界的に急ピッチで開発が進められているが、人間に代わって車の周囲に何があるかを検出する車載センサーはそれらに不可欠な技術。電波を利用するレーダーは、視界不良時でも検出性能が低下せず安価なため有力な方式の一つとされている。