世界最高クラスの新型電解質材料を発見―燃料電池・センサー・電子材料等の開発を加速:東京工業大学/高エネルギー加速器研究機構ほか
(2020年3月13日発表)
図 ペロブスカイト構造(提供:川村 康文)
東京工業大学、高エネルギー加速器研究機構(KEK)らの研究グループは、3月13日、世界最高クラスの新型電解質材料を発見したと発表した。
新設計法により、ペロブスカイトの一種である物質を用いて、世界初の酸素イオン伝導体を発見し、世界最高クラスの酸素イオン伝導度を実現したという。
酸化物イオン伝導体は、燃料電池や酸素分離膜、触媒などに広く応用できる材料として期待されてきた。しかし、これまで研究グループが研究してきたタイプの物質では酸化物イオン伝導体は知られていなかった。それを結晶構造データベースと結合原子価法を用いた高速スクリーニングを用い、かつCs+のサイズが大きいこととBi3+の変位によるイオン伝導度の向上という新概念からなる、新型高イオン伝導体の新設計法を活用することで新物質を作り出すことに成功した。
これらの結果は今後、革新的な燃料電池、酸素分離膜、触媒、センサー、電子材料等の開発を促進しエネルギー・環境分野に貢献すると期待される。
<参考>
・ペロブスカイト:図のような立体構造をもった物質でいろいろな物性を示すため、様々な研究で期待されている。
・酸素イオン伝導体:酸化物イオン伝導体とも呼ばれる。対象とする物体に外部から電圧をかけたときに酸化物イオンが電気を運ぶ物質。
・結合原子価法:物質中の原子間距離と経験的なパラメーターを使って、構造の安定性やテストイオンのエネルギーを計算する方法。イオンが単位胞を横切って移動するときのエネルギー障壁も見積 もることができる。単純な式で計算するため、数多くの新型イオン伝導体の候補をスクリーニングすることにも利用できる。