草食動物と肉食動物の量を予測できる数理モデルを作成―害虫の発生量や作物の被害量が予測可能に:農業・食品産業技術総合研究機構
(2016 年9月8日発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構は9月8日、生態系の中で「食う-食われる」の関係にある草食動物と肉食動物の生物量を予測する数理モデルを作成したと発表した。農作物を食い荒らす害虫(草食動物)の発生量と、それをエサにする天敵昆虫(肉食動物)の量、作物被害の程度が数量的に予測でき、化学合成農薬を使わずに天敵による効果的な害虫防除技術の開発に役立つとしている。
農地では、草食動物や昆虫などの害虫によって穀物や野菜、果実などを食い荒らす被害に見舞われている。その一方で、害虫をエサにする肉食動物(昆虫や鳥類)などによって食物連鎖が成り立っている。
作成した数理モデルは、この「食う-食われる」の関係にある動植物間でやり取りされる生物量を、単位面積当たりのたんぱく質量(g/㎡)として求めた。草食動物(害虫)がエサ(農作物)を食べる速度や成長速度、肉食動物(天敵)による獲物の探索範囲や捕獲率、動植物の栄養価などの因子を定義し、生物間の量的関係と、各因子が及ぼす影響を数学的に記述した。
このモデルの予測精度は高く、森林やサバンナの草食動物、肉食動物の生物量を10倍以内の誤差で予測できた。農地に適用すると、アシナガバチや小鳥などの天敵がいれば、害虫による作物の被害量を年間約数%に低く抑えることも可能だとしている。
また天敵が存在して食物連鎖がうまく働く環境があれば、クワの葉などに含まれる消化阻害物質によって害虫の成長を遅らせることもでき、一般的に作物被害が23%~62%近く減らせるとみている。このモデルは希少動物の保護の取り組みなどにも使えるとしている。