水素サプライチェーンのシステム構成技術を実証―再生可能エネルギーによる水素の製造・貯蔵・利用に道:産業技術総合研究所
(2020年3月18日発表)
(国)産業技術総合研究所は3月18日、再生可能エネルギーで発電した電力で水素を製造し、貯蔵・輸送安定性の大きいメチルシクロヘキサン(MCH)に変換して、最終的に熱や電気などの形で水素エネルギーを活用する、という一連のプロセスから成る水素サプライチェーンの技術を福島県の支援を得て実証したと発表した。
太陽光や風力などの再生可能エネルギーによる発電は、気象条件などによって発電電力量が変動するため、供給量と需要量のアンバランス対策に蓄電池システムを利用する例が多い。しかし、蓄電池方式は大量の余剰電力の貯蔵には膨大なコストがかかるため、水素による大規模電力貯蔵が注目されている。
福島県内における再生可能エネルギーを利用した水素サプライチェーン技術の開発に取り組んでいる産総研福島再生可能エネルギー研究所は、今回、水素の製造・貯蔵から利用に至る水素サプライチェーンの一連の技術を実証した。
サプライチェーンを成す主要なシステムの一つは水素キャリア製造システム。アルカリ水電解装置、凝縮器、それとトルエンからMCHを作る水素化反応器から成る。水素は再生エネルギーで発電した電力で水を電気分解して得る。製造される水素の流量や純度は大きく変動するが、システム全体を安定化させる設計を施し,シンプルな構成のシステムを開発、設備コストを半減させた。
もう一つの主要なシステムは水素混焼発電機システム。MCHを脱水素ユニットに供給し、MCHの脱水素反応にエンジン排熱を利用して水素を発生させ、水素と軽油との混焼試験を実施した。学校給食などで使用済みの食用油を原料とするバイオマス燃料を用いた混焼発電も実施した。
水素と軽油の割合を変えた混焼試験によると、水素の発熱量割合を80%以上とすることで化石燃料である軽油の使用量を80%以上削減できることを確認、CO2排出削減効果が期待できることが分かったという。
今回の成果をもとに、今後は地産地消事業モデルの普及や拡大を目指したいとしている。