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電磁波ロケットの基礎的実験に成功―燃料が要らないロケット実現に向け一歩:筑波大学

(2020年4月3日発表)

 筑波大学は43日、燃料を積まず電磁波(マイクロ波)をエネルギーにして飛ぶ未来ロケットの基礎的実験を行い電子レンジの約500倍という強さのマイクロ波で推力の発生を実証し、これまでできなかった推進効率の詳細な計測に成功したと発表した。

 研究を行ったのは、システム情報系の嶋村耕平助教とプラズマ研究センターの假屋強(かりや つよし)准教授らのグループ。

 今のロケットは大量の燃料を必要とし、ロケット重量の9割あまりが燃料といわれている。こうしたことから、化学燃料が要らず打ち上げコストの劇的低下が期待できる全く新しい推進システムとして21世紀に入った頃から研究が始まったのが電磁波ロケット。研究は国内外で進められており、まだどこも基礎的な域を出ていないが、2016年にはNASA(米航空宇宙局)が「燃料不要の夢の宇宙エンジン」として実験装置の写真を公開した。我が国では東京大学が基礎研究を行っている。

 電磁波はマイクロ波ともいう電波の一種で、電子レンジに使われていることから分かるように物の加熱に使われ、その特徴を高度に利用したのが電磁波ロケット。地上からロケットに向けマイクロ波を照射し、そのエネルギーで推進力を生むというのが基本原理。

 しかし、マイクロ波を地上からロケット側に伝送する「ワイヤレス給電」技術についての研究は始まったばかりで、大電力のマイクロ波を瞬時に計測する方法がなく、ロケットへのワイヤレス給電効率を直接計測することができなかった。

 それに対し今回、嶋村助教らの研究グループは「レクテナ回路」と呼ばれる送られた大電力マイクロ波を直流電流に変換する装置を独自開発してその壁を突破、ワイヤレス給電効率を含めたロケットの総合推進効率を詳細に測定することに成功した。

 研究は、筑波大プラズマ研究センター(茨城県 つくば市)にある500kW級のマイクロ波源 ジャイロトロンを使って行い、直径20cm、長さ約60cmの円柱型の推進器(電磁波ロケット模型)に向けて90cmの送電距離で周波数28GHz(ギガヘルツ、1GHzは10Hz)のマイクロ波を電子レンジの約500倍に相当する強さ(250kW)で照射したところ推力生成に成功。ロケット内部の大電力マイクロ波を計測した結果、ワイヤレス給電効率14%という値が得られたとしている。

 この成功により「今後の研究では、時々刻々と姿勢や位置が変化するロケットにいかに効率良くマイクロ波をワイヤレス給電できるかが大きな課題になる」と研究グループは次の開発目標を挙げている。