鮎は4匹以上になるとリーダーが出現する―脳科学で注目されている理論を適用して発見:筑波大学
(2020年4月6日発表)
筑波大学は4月6日、鮎は4匹以上の群れになると群れの中にリーダーが出現することを見つけたと発表した。
研究を行ったのはシステム情報系の新里高行助教らの研究グループ。
これまで実験する動物の数が2~10匹という小規模な群れの振る舞いについての研究は色々行われている。
小規模な群れは、目が届き易く個体たちの軌跡を長い時間追跡することができ、どのようなことが起きているのかを観察するのに適している。しかし、群れがシステムとしてどのように異なっているのかを解明することはできない。
そこで今回研究グループは、「統合情報理論」と呼ばれる脳科学の分野で注目されている理論を動物の群れの解析に初めて適用することを試みた。
この理論は、意識の発生を説明する理論とも呼ばれる。意識が存在するかを外から観測するのは極めて難しいが、イタリアの脳科学者G・トノーニが2001年に意識の度合いを測定するための理論として提唱したのがこの統合情報理論。最初は人の意識の状態を測定するのに使われていたが、近年はシステムがどのくらい「一体」になっているかを調べる方法として様々な領域に応用されつつある。
研究グループは、規模の小さい鮎の群れを生きた生物システムとして捉えてこの統合情報理論を用いて分析、「群れとしての統合度」の計測を行った。
その結果、鮎の群れは3匹と4匹との間にシステムとしての分断があることを発見。詳しく調べたところ、4匹以上の群れになるとリーダーシップをとるリーダーが現れることを見つけた。
この結果は、群れの行動シミュレーションモデルでは再現できず、実際の群れの特徴的な性質であることが分かったという。
研究グループは「この手法が一般化できればどのくらいのサイズのグループが議論に適していて、どのくらいのグループサイズが安定した集団生活を送れるのか、などが分かるかもしれない」と話している。