光で天敵を集め害虫減らす技術を開発―野菜栽培の敵「アザミウマ」の防除に新たな道:農業・食品産業技術総合研究機構/シグレイ/筑波大学
(2016年9月14日発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構と(株)シグレイ、筑波大学は9月14日、共同で農薬を使う代わりに光を使って天敵を集めて農業害虫を減らす技術を開発したと発表した。
農薬が効き難くなってきて大きな問題となっている野菜栽培の害虫「アザミウマ」をフィールドテストで半減させることに成功した。現在商品化が進められており、それに先立って9月から、シグレイが有料で「光利用型天敵農業サービスパックお試し版」の提供を開始する。
天敵は、生き物を攻撃する習性を持った生物のこと。
新技術は、ナス、トマト、イチゴ、など多くの作物に発生して大害虫と呼ばれているアザミウマの天敵で日本全国に分布している体長が2~3mmの「ナミヒメハナカメムシ」を紫色の光で引き付け(誘引)、集まることを利用して実現した。
アザミウマは、外国から入ってきた小さな害虫で、体長は1mm程。メスは、1匹で100~200個の卵を産み、どんな野菜にも発生するとまでいわれる厄介な害虫として農家に恐れられている。
しかも、近年は、これまで使われてきた農薬(化学合成殺虫剤)がほとんど効かなくなっているアザミウマが野菜の栽培現場に蔓延しだしている。
そうした農薬の効かない害虫による野菜の損失は、日本全体で年間1千億円を超えるといわれている。
虫類の多くは光に向かって集まる特性を持ち、さらに波長により好き嫌い(波長選好性)があることが知られている。
研究グループは、アザミウマの天敵ナミヒメハナカメムシが紫色の光に強く誘引されることを見つけ、天敵を集めアザミウマを捕食させ駆逐する方法を開発した。
フィールド試験をナスの畑に波長405nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)の紫色LED(発光ダイオード)を設置してナスの葉に向けて上から紫の光を照射する方法で行ったところ、1日3時間照射するだけで畑の天敵の数が、照射しない場合の約10倍に増え、アザミウマの数が60%減少することが確認されたという。
無農薬野菜への消費者ニーズの高まりに応えるため約2年後の商品化を目指している。
ナミヒメハナカメムシは、アザミウマのほかアブラムシの天敵でもある。研究グループは、殺虫剤が効かなくなったアザミウマ、アブラムシの両方に有効といっている。