海洋酸性化でサンゴや大型の藻類が減少―式根島の海底で発見、魚類の多様性が45%も低下:筑波大学
(2020年4月21日発表)
筑波大学は4月21日、式根島(東京都)のCO2が噴出している海底では海洋酸性化によりサンゴや大型の藻類が減って小型の藻類に変わり魚類の多様性が45%も低下していることが分かったと発表した。
筑波大生命環境系下田臨海実験センター(静岡県下田市)のアゴスティーニ・シルバン助教、ハーベイ・ベン助教、和田茂樹助教、稲葉一男教授らと英国のプリマス大学、イタリアのパレルモ大学の国際共同研究で見つけた。
海底からCO2が噴き出している場所のことを「CO2シープ」といい、世界で3カ所見つかっていて、筑波大はその4番目の場所を伊豆諸島の式根島の海底で発見したと2015年9月に発表している。
太平洋の温帯域の海底でCO2シープが見つかったのは初めてで、今回その式根島のCO2シープで魚類の多様性が大きく低下していることを発見した。
CO2による地球の温暖化が深刻化すると危惧されているが、もう一つCO2問題として浮上してきているのが海洋へのCO2の溶解。
放出されたCO2は一部が海に吸収され、結果として海の酸性化が進む。これを「海洋酸性化」と呼び、海洋の生態系がどのように変わるかが世界的に注目されている。
しかし、海洋酸性化は長い時間かかって起こる現象であるため、実験室でその影響を生態系レベルで評価するのは難しい。
そこで、それを解決する手段として世界的に注視されているのが自然界にもともとあるCO2シープ。海底から噴出するCO2が周囲の海水に溶け込み高CO2の海域ができているCO2シープを酸性化が進行した“未来の海”に見立て海洋酸性化が海の生態系に及ぼす影響を予測しようという研究が進んでいる。
今回の国際共同研究は、その一環として式根島周辺のCO2シープを対象に行ったもので、CO2の濃度が高い海底でサンゴや大型海藻がどう繁殖しその周辺に生息する魚類がどのような影響を受けているかを調べた。
式根島は、温帯域と熱帯域との境界にあたる場所にあって、海藻類とサンゴが混在し、魚類も温帯性・熱帯性の両方が生息している。それが、調査の結果CO2の噴出域に近い高CO2海域ではサンゴや大型の海藻が顕著に減少し小型の藻類に変わっていることが判明。それに伴いサンゴや大型藻類を生息の場にしている魚類の多様性が45%も低下していることが分かった。