大型たんぱく質の立体構造解明―宙に浮く水素イオンも:大阪医科大学/大阪大学/量子科学技術研究開発機構/茨城大学/筑波大学ほか
(2020年4月27日発表)
大阪医科大学、筑波大学などの研究グループは4月27日、糖尿病の発症にも関与している分子量7万600というこれまで最大の酵素たんぱく質を結晶化、その立体構造を高強度中性子線で解析することに成功したと発表した。酵素反応で重要な役割をする水素イオンが分子内で宙に浮いた特異な状態にあることも分かり、酵素の働きを量子論的に理解するための重要なデータになるという。
研究グループには大阪医大、筑波大のほか、大阪大学、(国)量子科学技術研究開発機構、茨城大学らが参加した。
たんぱく質の分子構造を調べるには、まずたんぱく質を結晶化、中性子線を照射してその回折画像から分子内の原子の配置などを明らかにする。今回、分析の対象にしたたんぱく質「銅アミン酸化酵素」はこれまで分子量が大き過ぎて結晶化が困難とされていたが、研究グループは約7㎣の大型結晶化に成功、高強度中性子線も利用して極めて高分解能な結晶構造解析に成功した。
この結果、酵素反応の仕組みの解明に欠かせない酵素内での水素イオンの正確な位置が分かった。さらに、この水素イオンは周囲の酸素原子との相互作用によって、“宙に浮いた”状態にあることなども明らかになった。
今回の成果について、研究グループは「中性子結晶構造解析の適用範囲を大きく広げるものであり、高分子量の有用たんぱく質や薬剤開発の標的たんぱく質において、水素原子を含んだ立体構造決定につながる」と期待している。