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原子層物質半導体の電子の空間分布を制御―半導体特性低下の抑制が可能に:筑波大学ほか

(2020年4月30日発表)

 筑波大学と東京大学の共同研究グループは4月30日、原子数個の厚みの2次元原子層物質半導体において、半導体中の蓄積電子の空間分布を制御できることを理論計算によって見出したと発表した。2次元原子層物質から成る半導体の特性低下抑制につながる成果で、新たな半導体技術の進展への寄与が期待されるという。

 厚みが原子レベルの炭素の層状物質グラフェンや、モリブデン・タングステンなどの金属と硫黄・セレンが結合した同様の厚みの遷移金属カルコゲン化合物は、総称して2次元原子層物質と呼ばれ、その特異な電子的特性は種々の機能性デバイスへの応用が期待されている。

 この原子層状の遷移金属カルコゲン化合物の代表例の一つである二硫化モリブデンについては、これまでにその単層あるいは薄膜を用いた半導体デバイスが作製され、動作試験などが行われているが、デバイス中での電荷分布は明らかになっていない。また、原子層状物質を保持する基板や絶縁膜との界面における半導体特性の低下が課題視されている。

 研究グループは今回、量子論に立脚した計算物質科学の手法を用いて、二硫化モリブデン薄膜半導体のゲート電界印加下での電子物性を調べた。その際、結晶方位を揃えて積層した2層二硫化モリブデンと、結晶方位を捻って積層した2層二硫化モリブデンに着目し、電荷分布に対する積層配向と電界強度の影響を調べた。

 その結果、強電界印加下で弱く電荷が注入された捻り積層2層二硫化モリブデンにおいては、85%の電荷が片層に局在することが明らかになった。他方、配向がそろった2層二硫化モリブデンにおいては電荷の局在現象は見られず、電荷分布は2層全体に広がっていた。

 この電荷の局在現象は、二硫化モリブデン薄膜内の一部の層にのみ電荷を注入し、それを伝導チャネルとして用いることが可能であることを示唆している。これにより、片方の層を電子伝導層に対する保護層として用いることができ、基板や絶縁膜による原子層物質半導体の半導体特性低下を抑えることが期待されるとしている。