遺伝性腎臓病のヒトiPS細胞を樹立―発症機序の解明や治療法の開発研究を促進:理化学研究所ほか
(2020年5月1日発表)
(国)理化学研究所と近畿大学、東京理科大学の共同研究グループは5月1日、遺伝性の腎臓病である「若年性ネフロン癆(ろう)」のiPS細胞をつくることに成功したと発表した。この難病の発症メカニズム解明や治療法開発の促進が期待されるとしている。
「若年性ネフロン癆(ろう)」は、腎髄質に嚢胞(のうほう)が形成され、進行すると腎線維化、腎不全を引き起こす難病。現在は腎移植以外に有効な治療法がないことから、発症メカニズムを解明して移植に代わる新たな治療法を開発することが望まれている。
共同研究グループは今回、研究に必要な病態モデル細胞の作製を目指してiPS細胞の樹立を試み、患者由来のヒトiPS細胞の樹立に成功した。
同グループの近畿大学チームは5年ほど前に日本人の若年性ネフロン癆患者では「NPHP1遺伝子」と名付けられた遺伝子の欠失が高い頻度で見られることを見出したが、NPHP1遺伝子の欠失変異から発症に至る機序には不明な点が多かった。
今回、NPHP1遺伝子に欠失変異がある2人の患者から末梢血を採取し、これを京都大学iPS細胞研究所に持ち込んでiPS細胞を作製、6株のiPS細胞株を樹立した。
得られたiPS細胞を解析したところ、NPHP1遺伝子の欠失変異が保持されており、NPHP1遺伝子の発現の消失が確認された。
iPS細胞は再生医療だけではなく、さまざまな疾患の病態解析や治療法開発に有効なツールとなる。今回は、樹立した患者由来のiPS細胞から分化誘導した細胞が病態モデル細胞として役立つ。これにより、発症機序の解明や治療法の開発研究の促進が期待されるとしている。