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光捕集機能を備えた有機マイクロ結晶レーザーを開発―レーザー発振の閾値低下やレーザー光源の微小化可能に:筑波大学ほか

(2020年5月8日発表)

 筑波大学と神奈川大学、九州大学などの共同研究グループは5月8日、光を捕集する機能を持った有機物製のマイクロ結晶レーザーを開発したと発表した。レーザー発振閾値の低下やレーザー光源の微小化、光回路・バイオセンシングへの応用などが期待されるとしている。

 研究グループのメンバーの一人、神奈川大学の辻勇人教授らは2012年に、発光特性と光耐久性に優れた「炭素架橋オリゴフェニレンビニレン(COPV)」というπ共役系有機分子を開発した。その後、この有機分子は国内外で研究され、この有機分子を用いて薄膜あるいはマイクロ結晶が作られ、レーザー発振が報告されている。

 マイクロ結晶は結晶端面における光の反射により、光を結晶内部に閉じ込めて共振させることが可能であり、近年、マイクロレーザー共振器として応用研究が活発だ。

 研究グループは今回、この有機分子COPVに光捕集機能を持つ「カルバゾールデンドロン」という樹状分子部位を付与することにより、光エネルギーを効率的に捕集することを考え、COPVにカルバゾールデンドロンを付与した巨大分子を設計し、その結晶化に成功した。

 得られたマイクロ結晶を紫外光で励起(れいき)したところ、樹状分子部位が光アンテナとして機能し、光エネルギーが効率的にCOPV部位に捕集されることが見出された。また、マイクロ結晶端面における光の全反射により発光が結晶内部に閉じ込められ、レーザー発振が起こることが確認された。

 これは発振閾値の低減、すなわちレーザー発振に必要な最低限の励起光強度の低減につながるもので、レーザー発振の低閾値化による効率化が期待されるという。

 発光部位を、異なる発光波長を持つ分子に置き換えれば、フルカラーのレーザー発振結晶の構築も考えられるとしている。