偽造不可能なマイクロ光認証デバイスを開発―光で色が変化するフォトクロミック材料使う:筑波大学ほか
(2020年5月22日発表)
筑波大学、立教大学などの共同研究グループは5月22日、光を当てると色が変わる材料を使ってマイクロ光認証デバイスを開発したと発表した。「ジアリールエテン」と呼ばれるフォトクロミック材料を用いて実現したもので、偽造が不可能な光認証デバイスが作れるといっている。
太陽の光が当たると色が変わるメガネのように、光を浴びる・浴びないで色が変化する物質のことをフォトクロミック材料と呼ぶ。
ジアリールエテンは、エチレン分子にアリール基という原子団が2つ結び付いた有機物質で、今回の研究メンバーの一員の入江正浩立教大客員研究員が九州大学教授だった1988年に初めて合成した“日本生まれ”のフォトクロミック材料。光着色・退色の繰り返し耐久性に優れていることから光メモリー素子などへの応用が期待され、DVDより遥かに多くの情報を1枚のディスクに入れられるのではないかと見られている。
今回そうした特性を利用して偽造の判定に使えるマイクロ光認証デバイスを筑波大、立教大、(国)物質・材料研究機構、ライプニッツ光技術研究所の日・独共同チームで開発した。
研究では、ジアリールエテンの分子に溶液中で自己組織化と呼ばれる集合化を起こさせて粒径が数㎛(マイクロメートル、1㎛は100万分の1m)という超微細なマイクロ球体を先ず作った。すると、このマイクロ球体は内部に光を閉じ込めて特定の波長の光を強くする共振器(マイクロ球体光共振器)の機能を示し紫外線照射による光励起(れいき)を行なうと化学構造に変化が生じて黄色に発光、可視光を当てると発光が消えて元に戻りマイクロ球体ごとに発光・消光のスイッチが行なえることを掴(つか)んだ。
そこで、さらに研究を進め、ジアリールエテンの溶液を基板上に滴下してゆっくり溶媒をとばしたところ約5㎛の周期で㎛スケールのジアリールエテンの超微細な円盤が配列した光認証デバイスに使えるマイクロ半球体アレイを得ることに成功した。
マイクロ半球体アレイの表面には、発光・消光のスイッチでマイクロスケールの超微細な描画が行なえ、㎛レベルの同じに見える描画を行ってもスペクトルパターンの違いにより個々の描画を識別できるという。
現在の本人確認(認証)の方法は、指紋を別にするとバーコードやQRコードのように0・1(ゼロイチ)の情報パターンを読み取るものがほとんどだが、「偽造や複製が困難なより安全性の高い認証デバイスが構築できる」と研究グループは話している。