慢性腎臓病の治療に道―発症の仕組み遺伝子レベルで解明:筑波大学ほか
(2020年5月22日発表)
筑波大学と昭和大学、関西医科大学の研究グループは5月22日、難病に指定されている慢性腎臓病の一つ「巣状分節性糸球体硬化症」の発症を抑える仕組みを解明したと発表した。腎臓内で尿を作るろ過機能を正常に保つのに不可欠な細胞の働きを遺伝子レベルで解明、その仕組みを利用することで既存の白血病治療薬が腎障害悪化やたんぱく尿の軽減に役立つことも突き止めた。
腎臓は血液をろ過して老廃物や塩分を尿として体外へ排出、必要なものは再吸収する重要な臓器。このろ過機能に欠かせないのが腎臓内にある糸球体上皮細胞だが、研究グループはこの細胞内で遺伝子の働きを調節している転写因子「MafB」の減少が難病発症に関係していることをマウスによる実験で突き止めた。
さらに、遺伝子工学的な手法でマウスの腎臓内で働く転写因子「MafB」をなくしてやると、たんぱく尿が出るようになり難病の巣状分節性糸球体硬化症を発症することが分かった。また、この難病の患者から採取した腎臓の糸球体上皮細胞では、実際に転写因子「MafB」が減少していることも見出した。
一方で、遺伝子操作や既存の白血病治療薬「オールトランスレチノイン酸」を投与して糸球体上皮細胞に転写因子「MafB」を増やしてやると、腎障害悪化やたんぱく尿の症状を軽減できることが分かった。この結果から、研究グループは「巣状分節性糸球体硬化症の新しい治療法開発につながる」と期待している。