植物の種子の発芽で新説を発表―同種の落葉からの水溶性化学物質が促進:弘前大学/森林総合研究所
(2020年5月25日発表)
弘前大学と(国)森林総合研究所の共同研究グループは5月25日、植物の種子の発芽が同種の植物の落ち葉から出る水溶性の化学物質によって促進されることを帰化植物の一種「エゾノギシギシ」で見つけたと発表した。
弘前大の修士課程2年(研究当時)だった大崎晴菜さんと、山尾僚助教、森林総研の向井裕美主任研究員の成果。
エゾノギシギシはヨーロッパ原産の多年草。北海道で最初に確認された(1909年)ことから「エゾ」が付いたといわれている。背丈は1m以上にまでなり、下部に15~30cmの長楕円形の葉を付け今では全国で見られて非常に繁殖力が強い。
成長したエゾノギシギシの周辺は、古くなって落ちた葉に含まれる物質などによって植物が生育し難い環境になっている。そうした状況のもとでエゾノギシギシは芽生えていることを過去の研究で明らかにしている。そこで、さらにエゾノギシギシの種子は同種の落ち葉由来の物質を手がかりにして発芽しているのではないかと考え今回その検証を行った。
実験は黄色に変色した落葉寸前のエゾノギシギシの葉を2枚の寒天で挟んでシャーレにセット、その上にエゾノギシギシの種子を並べ、併せて比較対象としてエゾノギシギシの葉の代わりにろ紙を挟んだものを用意、両方の発芽を観察するという方法で行った。
すると、エゾノギシギシの種子の発芽率は、葉を挟んだ方が1週間の経過で50%程度になり、ろ紙の方の2倍以上に達することが分かった。
同様の実験はエゾノギシギシと一緒に生育していることが多いウシノケクサ、シロツメクサ、オオバコの各種子についても行っているが、発芽は逆に抑制されるか、何も影響を受けなかった。
実験では、種子と葉は直接接触しておらず、寒天を介して葉の水溶性物質のみが種子に供給されていることからエゾノギシギシの種子の発芽は、葉から浸出する水溶性の化学物質によって促進されていることが判明したといっている。
ただ、水溶性化学物質が何かは発表していない。