結晶構造情報の取得作業を自動化・効率化―ブラックボックス最適化法を導入し実現:高エネルギー加速器研究機構ほか
(2020年6月5日発表)
高エネルギー加速器研究機構(KEK)と総合研究大学院大学、(国)産業技術総合研究所の共同研究グループは6月5日、物質・材料研究に必要不可欠な粉末X線回折(PXRD)パターンの解析を自動化・高効率化する手法を開発したと発表した。熟練者が1日を要していた作業をノートPC 1台で1時間程度で済ませられるという。研究の加速やコスト低減が期待されるとしている。
粉末X線回折は、物質・材料の機能と性質を支配する結晶構造の情報を得るために最も広く利用されている分析手法の一つ。リートベルト精密化法と名付けられた方法でデータ解析をし、このデータ解析を行うことによって結晶構造の精密な情報が得られるが、多数のパラメータを調整しつつ試行錯誤を繰り返さなければならず、人手と時間の面でコストがかかっていた。
研究グループは今回、このデータ解析の問題が、機械学習においてモデルのチューニングを自動化するハイパーパラメータ最適化問題と類似していることに気付いた。この解き方を取り入れて応用すれば、データ解析の自動化、高効率化につながる可能性がある。
そこで、リートベルト精密化法に対して、ハイパーパラメータ最適化で実績のあるブラックボックス最適化の枠組みを導入することにより、自動化する手法を開発した。
この新手法を用いると、測定データとシミュレーション結果の一致精度、いわゆるフィッティング精度が熟練者を上回る。加えて、熟練者が1件に1日を要していたデータ解析がノートPC1台を用いて1時間程度で行えるようになる。また、従来用いられてきた熟練者の典型的な手順では到達できなかった結晶構造の候補を発見するという成果も得られた。
今回の成果は、結晶構造解析だけではなく、さまざまな計測機器におけるデータ解析の自動化に役立つことから、計測と解析とを統合した計測機器開発への活用が期待されるとしている。