花の観賞は心身のストレスを緩和する―癒し効果を心理的、生理的、脳科学的に実証:農業・食品産業技術総合研究機構ほか
(2020年7月1日発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構は7月1日、筑波大学などと共同で花の観賞が脳の活動に影響を与え、心身のストレスを緩和する癒し効果があることを実証したと発表した。ストレスを受けているヒトに花の画像を見せるとストレスで上昇した血圧やホルモンの値が低下し、花の癒し効果が心理的、生理的、脳科学的に実証されたという。
ビルが林立する街並みより、木々が育ち小川が流れる自然環境の方が気分が向上してストレスが緩和されることが知られている。
一方、花もお見舞いやプレゼントなどに多用されるようにヒトの心理に好影響を与えている。しかし、花の場合、観賞によってストレスの軽減がはかれるのかについてはまだ十分に検証が行われていない。
ヒトはストレスを感じると恐怖や怒りといったネガティブな感情の動き(情動)を示し、血圧が上がってコルチゾールと呼ばれるストレスホルモンの分泌が増える。
そこで研究グループは、多数の実験参加者を対象に花の画像と花以外の画像をそれぞれ見せて情動、血圧、コルチゾールへの影響を比較検討すると共に、花の画像を見た時に生じる脳の活動を調べるということを行った。
調査は、平均年齢が24.4歳の35人の実験参加者に対し、ストレスとして事故場面やヘビ、虫といった不快画像を提示した後、心地良い花の画像を提示して気持ちを回復させる試験を繰り返し行ったところ、回復期に最大で3.4%血圧が低下するという効果が記録された。
一方、平均年齢21.6歳の実験参加者32人に対して不快画像を4分間提示した後に花の画像を8分間見せて唾液の中のコルチゾールの値を計測し比較したところ、花の画像を見ることによりストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が約21%減少するという生理的癒し効果が確認された。
これに加えて研究グループはさらにfMRI(磁気共鳴機能画像法)と呼ばれる脳の内部を観測する方法を使って脳科学的な効果を明らかにした。
fMRIは脳内の血流量の変化を可視化する手法。平均年齢25.5歳の実験参加者17人を対象に不快画像と花の画像を見ている時の脳の活動をfMRIで計測したところ、花の画像は不快な記憶の想起やネガティブな情動の発生を抑えることが認められた。
研究グループは今後も研究を進め「生花の観賞が健康にどの程度寄与するのか、その効果を明らかにしていきたい」と展望を話している。