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殺虫剤に対するハナバチ類の感受性を解明―農業害虫や感染症を媒介する蚊の対策などに期待:近畿大学/筑波大学

(2020年7月3日発表)

 近畿大学農学部応用生命化学科の松田一彦教授は7月3日、筑波大学などと協力して昆虫の神経伝達物質のニコチン性受容体を昆虫の体外で組み立て直す(再構築)ことに世界で初めて成功したと発表した。有用なミツバチに影響を与えず害虫だけに効く農薬の開発や、マラリアなどの感染症を媒介する蚊の駆除ができる安全な昆虫制御剤の開発につながるとみている。東北大学、国立遺伝学研究所、ロンドン大学との共同研究の成果。

 いま実用化されている多くの殺虫剤の機能は、①虫の神経系に作用するタイプ、②昆虫の成長を制御するタイプ、③筋収縮させて摂食行動を停止させるタイプに分けられる。

 世界で最も多く使われているネオニコチノイド系殺虫剤は、①のタイプで中枢神経のニコチン性受容体の機能にダメージを与えることで効果を発揮する。

 研究チームは、ショウジョウバエを使って昆虫のニコチン性受容体の複雑な立体構造を組み立てるために欠かせないたんぱく質を探していて、この受容体の再構築に必要な補助因子を見つけた。

 人などの脊椎動物のニコチン性受容体が様々な細胞で再構築できるものの、昆虫のニコチン性受容体はこれまで再構築が不可能だった。

 そこで近畿大の松田教授と伊原誠准教授らは、筑波大の丹波隆介教授らが見つけたショウジョウバエ神経細胞内での受容体たんぱく質の分布データを踏まえて、再構築に取り組んだ。その結果、ある種の補助因子を加えることで、ショウジョウバエの受容体をアフリカツメガエルの卵母細胞で再構築することに成功した。

 これを基にミツバチ、ショウジョウバエ、マルハナバチのニコチン性受容体に対する殺虫剤の影響を細かく調べた。一部の殺虫剤は、農作物の花粉などに残留しているといわれる数ppb(1ppbは10億分の1)以下のごくわずかな濃度でも、ミツバチなどのニコチン性受容体の機能を壊すことを解明した。

 この成果は、世界の食糧供給を脅かす農業害虫や、マラリア、デング熱などの感染症を媒介する蚊を、人間にとって安全な昆虫制御材で防除する技術の開発などに役立つという。