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全身性強皮症の発症に関係する遺伝子多型をヒトで確認―病因や病態の解明、治療法の開発促進へ:筑波大学

(2020年7月28日発表)

 筑波大学の研究グループは7月28日、膠原病(こうげんびょう)の一つである全身性強皮症の発症に関係する遺伝子多型をヒトで確認したと発表した。これまでに動物では、FLI1と名付けられた転写因子の、遺伝子多型に関連する発現低下が全身性強皮症の特徴的な病態を起こすことは知られていたが、ヒトにおいてFLI1遺伝子多型と全身性強皮症との関連は明らかでなかった。今回の解明により、全身性強皮症の病因や病態の解明、治療法の開発の加速が期待されるという。

 全身性強皮症(SSc)は、皮膚や臓器の線維化と血管障害、自己抗体産生を主症状とする代表的な膠原病の一つ。複数の遺伝因子と後天性因子が発症に関与していると考えられている多因子疾患だが、原因は未解明で、全身性強皮症に特徴的な症状を説明できる遺伝因子はあまり見出されていない。

 DNAからRNAへの遺伝情報の転写に関わっているたんぱく質を転写因子というが、FLI1はその一つで、血管内皮細胞や血球系細胞、線維芽細胞などに発現する。近年、動物モデル研究で、FLI1の発現低下が線維化、血管障害、自己抗体産生という、全身性強皮症の特徴的な病態を起こすことが明らかにされ、ヒトでも同様なことが認められるかどうか注目されていた。

 研究グループは今回、FLI1遺伝子の内部にある、GとAの2つの遺伝暗号(塩基)の繰り返し数の個体差を指すGAリピート多型というマイクロサテライト多型に注目、FLI1遺伝子のGAリピート多型と全身性強皮症の疾患感受性との関連を、639人の患者と851人の健常者を対象に解析した。

 その結果、全身性強皮症群では、GAの繰り返し数が大きいアリル(対立遺伝子)が有意に増加していることを見出した。また、繰り返し数が大きいアリルを持つ場合、末梢血のFLI1mRNAの発現が低下していることも分かった。

 これは、遺伝子多型に関連するFLI1発現低下がヒトにおいて全身性強皮症の疾患感受性を上昇させることを示唆しており、今後、全身性強皮症の治療法開発に結び付くことが期待されるとしている。