鹿の害防ぐ柵の設置は植物多様性の保全にも繫がる―霧ヶ峰のニッコウキスゲのお花畑で判明:東京大学/森林総合研究所ほか
(2020年8月26日発表)
東京大学大学院の内田圭助教、(国)森林総合研究所の小山明日香主任研究員らの共同研究グループは8月26日、長野県の霧ヶ峰に広がるニッコウキスゲのお花畑に設置されている鹿の害を防ぐ防鹿柵の効果を検証したところ開花数が増えて併せて柵が植物多様性の保全に大きく貢献していることが分かったと発表した。
研究には、長野県環境保全研究所の尾関雅章主任研究員、同・須賀丈自然環境部長、神奈川大学理学部の岩崎貴也特別助教、兵庫県立大学の中濱直之講師が参加した。
霧ヶ峰は多くの絶滅危惧植物が生育している地として知られ、中でもハイカーに人気なのがお花畑の綺麗なニッコウキスゲ。ユリ科の多年草で毎年7月から8月にかけて山吹色の大きな花が咲き多くのハイカーを引き付けている。
ところが、引き付けられるのはハイカーだけでなく、ニッコウキスゲは鹿の好物なためそれを求めて集まってくる鹿(ニホンジカ)による食害が大きな問題で、霧ヶ峰ではニッコウキスゲと植物多様性の両面を同時に保全することが求められている。
そこで研究グループは、これまで霧ヶ峰のお花畑に設けられてきた鹿の侵入を防ぐ大規模な防鹿柵がど れだけの効果をあげているのかの検証を行った。
その結果、大きな違いが生じていることが分かったのが開花数。柵内の方が柵外より様々な花が3倍ほど数多く咲いていることが確認され、中でもニッコウキスゲの柵内外の開花数の差は大きく、約300倍もの違いが生じていることが計測された。
開花植物の種類も柵内の方がずっと多く30種近くを数え、植物の多様性保持に柵が大きく貢献していることが検証された。
近年ニホンジカは全国的に増加しており、食害などによる植生への影響で植物の多様性の減少が各地で起きている。