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世界最高の遠心加速度を持つ遠心流動場分離装置を構築―分級分解能の高度化と分級時間の短縮を実現:産業技術総合研究所ほか

(2020年8月24日発表)

 (国)産業技術総合研究所と(株)島津製作所の共同研究グループは8月24日、10nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)~40μm(マイクロメートル、1µmは100万分の1m )の広いサイズ範囲の粒子を分級できる「遠心流動場分離装置」を構築したと発表した。新装置は医療、食品、化粧品、顔料など様々な分野における材料分析やサイズ分級技術として最先端材料開発に寄与することが期待されるという。

 近年、精密なサイズ評価や高精度のサイズ分級のニーズが高まっており、欧州で流動場分離装置と呼ばれる装置が実用化されている。

 これは、狭い流路を流れる様々なサイズの材料物質を、流れの垂直方向の「力場」と「拡散力」のバランスの違いに応じて分離する装置で、力場が遠心場のものを遠心流動場分離装置と呼んでいる。

 EUのナノ材料規制(REACH規制)が2020年からスタートしたことなどで流動場分離装置のニーズは増しているが、これまでのものは分級分解能が低く、分級に長時間を要するなどの課題を抱えていた。

 そこで研究グループは、これら課題の解決を目指し、高度な遠心流動場分離装置の実現に取り組んだ。

 遠心流動場分離装置は、通常の液体クロマトグラフィーのカラム部分の代わりに分離チャネルを用いている装置で、分離チャネルは乱れの無い流れを維持できる精密流路。ここを流れる粒子は高速回転による遠心力と、材料サイズに依存する拡散力によりサイズ分級される。

 今回、この精密流路に一体成型分離流路を採用し、耐圧性能を高めるとともに軸シールの耐摩耗性を向上させた。また、密閉性と高速回転を両立させた独自のローター回転機構を製作した。

 これにより、これまでの装置では2,700Gだった遠心加速度を15,900Gにまで高めることに成功、分級の高性能化と分級時間の半減を実現した。分解能は数nmで、10nm~40μmの広いサイズ範囲の粒子を分級できる。

 新装置を用いることによりサイズ分布を精密に評価された先端材料の開発の促進が期待されるとしている。