たんぱく質のフラクタル構造―テラヘルツ光で解明へ:筑波大学ほか
(2020年8月31日発表)
筑波大学、立命館大学などの共同研究グループは8月31日、たんぱく質分子の内部に潜む部分と全体が相似形というフラクタル構造が光の吸収にどう影響するかを10の12乗ヘルツという超高周波数のテラヘルツ光でとらえることに成功したと発表した。ナノメートル(1nmは、10億分の1m)レベルのフラクタル構造が光とどのように相互作用して分子運動に影響を与えるかを検出・評価できるという。フラクタル物質による光吸収の定量的な理解につながると期待している。
共同研究グループには、筑波大と立命館大のほか東京工業大学、東京大学の研究者が参加した。
ガラスや高分子、たんぱく質分子などの不規則構造を持つ物質がナノメートルレベルの微細領域でどのような振る舞いをするかというナノスケールダイナミクスは物質の硬さなどの弾性特性を支配しているが、その分子レベルでの解明には今も未知の領域が多く残されている。特にナノスケール領域でフラクタル構造を持つ物質にどのような振る舞いが現れ、光(電磁波)でどう検出されるかはこれまでほとんど知られていなかった。
研究グループは今回、光とフラクタル構造体の相互作用についてまず理論的に数式化。そのうえで、光を照射したときにどの波長の光がどの程度吸収されるかという光吸収スペクトルにフラクタル情報がどのように反映されるかを明らかにした。さらにフラクタル構造を持つたんぱく質にテラヘルツ光を照射する実験をし、周波数ごとにどの程度光が吸収されるかという実験データを得た。これらの実験から、最終的にたんぱく質内部に潜むフラクタル構造に関する情報を得ることに成功した。
今回の成果の意義について、研究グループは「たんぱく質や高分子ガラスなどのナノスケールフラクタル構造の情報評価が、テラヘルツ光を用いることで非破壊・非接触でできるようになる」と期待している。