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「自家和合性」のウメ新品種を2種開発―大粒で一粒の重さ30g以上、来年秋から苗木販売へ:農業・食品産業技術総合研究機構

(2020年9月14日発表)

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「麗和(れいわ)」の結実状況 (提供:農研機構)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は9月14日、自家受粉で実がなるウメを2品種開発したと発表した。新品種は自分自身の花粉で結実する「自家和合性」という性質を持っていて、一粒の重さが30g以上の大粒のウメが実り「麗和(れいわ)」、「和郷(わごう)」と名付けた。日本果樹種苗協会と許諾契約を結んだ業者が来年秋から苗木の販売を行なう予定という。

 ウメの実は梅干しや梅酒などに使われ、全国の収穫量は農水省の2014年の発表によると年間111,400tとなっているが、その主要品種の多くは自家和合性ではなく自家不和合性という性質のウメが占めている。

 多様な性質を持たせるため自分自身の花粉ではなく受粉樹からの花粉で受精するようにすることを自家不和合性にするという。だが、近年は開花期の天候不順の影響で自家不和合性ウメの結実が安定しない年が増えている。

 一方、これまであった受粉樹が要らない自家和合性のウメは「小梅」といわれる一粒が10g程度以下にしかならないというものが多く、大きくなる品種にはヤニ果といって果肉内に水飴状のヤニが生じる難点があった。

 新品種は、一粒が30g以上になり、ヤニの発生が少ないことから「大きな果実を受粉樹なしで生産できるウメとして普及が期待される」と農研機構は話している。

 開花期がやや遅いことから遅咲きの自家不和合性品種の受粉樹としても利用できるといっている。