カーネーションの花に黄色の色素カロテノイドを発見―キクの黄色やトマトの赤橙色など新しい色合いの品種開発が可能に:東京農工大学/農業・食品産業技術総合研究機構
(2020年9月16日発表)
カロテノイドによる黄色品種“クラブ”
東京農工大学と(国)農業・食品産業技術総合研究開発機構の研究グループは9月16日、カーネーションが黄色の色素カロテノイドを作ることを発見したと発表した。これまでカロテノイドを作らないとされていたが、植物分類学の常識を覆す成果となった。
カーネーションは地中海沿岸原産のナデシコ科ナデシコ属の植物で、バラ、キクと並んで世界の三大花き植物に数えられる。フリルのように波立つ花びらに豪華さや可憐さが漂い、独特の香りが人気を呼んでいる。花の色は赤、ピンク、白が中心。淡い黄色の花もあるが色素はカルコンという化合物だった。
バラやキクなどの黄色はカロテノイド色素によるもので、カーネーションはカロテノイド合成が不可能とされてきた。もっと幅広く愛用されるには黄色系の花色を増やす必要があった。
東京農工大は、民間会社と共にカーネーションの品種の花色の研究を続け、カロテノイドを合成した「クラブ」という黄色品種を発見した。さらに農研機構と共にカロテノイド色素の解析と電子顕微鏡観察を実施し、千葉大などと共に合成酵素遺伝子解析や色素化合物解析をしてきた。
その結果、これまでカーネーションでは確認されてなかった「有色体」を電子顕微鏡観察で発見した。有色体とは、葉緑体から変化した色素を蓄積する細胞小器官のこと。ほとんどの植物の黄色は色素を蓄積する有色体がカロテノイドを合成することが明らかにされている。白いカーネーションの場合は白色体でカロテノイドが合成できなかった。
カロテノイドを合成できる仕組みや品種を見い出せたことで、今後、育種材料として利用していく。カロテノイド合成活性の高い品種や、トマトやニンジンに含まれる赤橙色のカロテノイドを多量に蓄積する品種を使って、これまでにない色合いのカーネーションの新品種を開発したいとしている。