ソフトアクチュエーター用の大変形材料の開発加速へ―所望の分子構造を短時間で提案可能に:産業技術総合研究所ほか
(2020年9月16日発表)
(国)産業技術総合研究所と先端素材高速開発技術研究組合の共同研究グループは9月16日、エネルギーを運動に変換するソフトアクチュエーターに必要とされる、抵抗なく大変形する材料の開発を加速化できる手法を開発したと発表した。“抵抗のない大変形”が発現する分子構造の有力候補をごく短時間で提案できるため、革新的なアクチュエーター材料開発の大幅な期間短縮が期待されるという。
高分子などの柔らかい材料で作られたアクチュエーターをソフトアクチュエーターという。筋肉のような動きを再現できたりすることから、リハビリ・介護のためのパワーアシスト用ウェアラブルマシンや医療手術支援の遠隔操作マシンをはじめとした各種機器・装置への応用が期待されている。
しかし、ソフトアクチュエーター用の材料開発は、これまでもっぱら技術者の勘と経験による試行錯誤の繰り返しで、多大なコストと時間を要することが課題になっていた。
研究グループはこの問題の解決を目指し、革新的なソフトアクチュエーター材料の開発につながる計算技術の構築に取り組み、今回その主要技術を開発した。
開発したのは、液晶エラストマー材料を対象とした技術で、抵抗なく大変形する材料の開発を加速する手法。
液晶エラストマーは、高分子の柔らかな主鎖または側鎖に、液晶に似た剛直な分子単位を含む架橋高分子を指す。刺激に素早く応答し大変形する特徴的な物性を持つことから、新規のソフトアクチュエーター材料として注目され、研究開発競争が活発化している。
研究では、分子構造を表す多数のパラメーターとその材料変形のシミュレーション結果をデータベース化し、それを機械学習で解析するようにした。その結果、大変形の特徴を決定する分子構造パラメーターを特定することが可能になり、候補を約10分の1に絞り込むことに成功した。これにより、所望の大変形をする分子構造を短時間で提案可能になり、材料開発期間の大幅な短縮が期待されるという。
開発した手法はエラストマー、ゲルなどの大変形を特徴とする様々な材料開発への応用が期待されるとしている。