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綺麗なオレンジ色のサツマイモを2種開発―種苗会社が来春から苗の供給を開始へ:農業・食品産業技術総合研究機構

(2020年10月20日発表)

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オレンジ色の加工用サツマイモ新品種「あかねみのり」
干しイモに加工すると色調が濃くなるという
(提供:農研機構)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は10月20日、綺麗なオレンジ色をした加工用サツマイモを2品種開発したと発表した。消費者の嗜好の変化とともに色のついたカラフルなサツマイモが求められているが、色だけでなく味も良く多収なことからチップの製造や干し芋作りにうってつけという。2021年春から種苗会社が苗の供給を開始する。

 サツマイモが甘いのは酵素の一種β(ベータ)アミラーゼがデンプンを糖に変えているからで、ビタミンやミネラル、植物繊維などを含み、肉色(食べる部分の色)は多くが白から黄色。それが最近は紫サツマイモのヒットもあってカラフルな品種の需要が高まる傾向にある。肉色がオレンジ色(橙色)の品種としては既に「ベニハヤト」などあるが、いずれも収量性や加工適性などに難があって、生産の現場からはそうした弱点を改良した新品種の開発が望まれている。

 新品種の名称は「あかねみのり」と「ほしあかね」。オレンジ色が茜色(あかねいろ)に通じるところから名付けたという。

 「あかねみのり」は、味が優れる「べにはるか」を母、カロテンを含有し収量が多い「作系22」を父とする交配の組み合わせから選抜した。

 得られるイモの形が揃っていて、これまでのオレンジ色の加工用品種の「ベニハヤト」や「ヒタチレッド」より収量が大幅に多くチップ作りに適している。根に寄生し全国的に分布する線虫のサツマイモネコブセンチュウや、土壌中の糸状菌によるつる割病に対して抵抗性を持っている。ただ、立枯病には弱いため防除を要する弱点がある。

 一方、「ほしあかね」は、カロテンとアントシアニンを含有する「関東136号」を母、干し芋に適している「ほしキラリ」を父とする交配組み合わせから選抜した。こちらも多収で、茨城県農業研究所での栽培では「べにはるか」を4割近くも上回る収量を記録している。

 農研機構では、当面九州地域でのチップ加工や、茨城県を中心とする干し芋作りに普及するものと期待しているが、寒冷地にも適していることから北海道でも栽培できるといっている。