「パリティ対称性」の破れの兆候を観測―宇宙の暗黒物質・エネルギーの正体解明に近づく：高エネルギー加速器研究機構ほか
(2020年11月24日発表)
高エネルギー加速器研究機構（KEK）とマックス・プランク宇宙物理学研究所、東京大学の共同研究グループは11月24日、宇宙の暗黒物質・暗黒エネルギーの正体解明につながる可能性を秘めた「パリティ対称性」の破れの兆候を観測したと発表した。今後観測の統計的優位性が高まれば、宇宙物理の新たな発見への道が開けるとしている。
この宇宙は暗黒物質や暗黒エネルギーによって支配されていると考えられており、その正体を明らかにするには、パリティ対称性を破る新しい物理の探索が有力な方法とされている。
パリティ対称性は空間座標を反転させても変わらない現象を指す。もし、暗黒物質や暗黒エネルギーが宇宙誕生時の宇宙マイクロ波背景放射（CMB）の光の波とパリティ対称性を破る相互作用をしていると、CMBの偏光にその情報が刻まれて、偏光面の回転として観測されることになる。
ところが、この信号は微弱であり、CMBを観測する検出器の回転を較正する際の不確かさによって見えなくなっていた。
研究グループは、この観測に突破口を開く着想を得て、パリティ対称性の破れを測る新手法を開発し、欧州宇宙機関のプランク衛星のCMB観測データにこの手法を適用することによって今回の成果を得た。
それによると、宇宙を記述する物理法則がパリティ対称性を破っている兆候を、99.2％の確からしさで観測した。今後の検証により、この兆候が99.99995％以上の確からしさで発見されれば、暗黒物質や暗黒エネルギーがパリティ対称性を破る相互作用を行っている証拠となるという。
「アクシオン」と呼ばれる新しい素粒子の候補はパリティ対称性を破り、暗黒物質・暗黒エネルギーの候補として注目されている。CMB観測を通して今後その検証が期待されるという。
