ジーンバンク保存の種子8万点の寿命を推定―ダイズの種子は15年、キュウリは130年、効率的な保存・利用に貢献:農業・食品産業技術総合研究機構
(2020年11月18日発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構は11月18日、ジーンバンク(遺伝子銀行)に保存中の50種、8万点の種子の寿命を推定したと発表した。ダイズで約15年、コムギ約20年、トマトが約30年だった。種子を長期保存するジーンバンク事業の効率化を図ると共に、初めての作物の発芽率などを推定できるようになり、種苗業者や研究者の採取計画にも役立つとみている。
遺伝資源は、自然破壊の広がりや温暖化の進展、消費者の好みの変化などで急速に失われつつあるといわれる。一度失われてしまうと同じものの入手が極めて困難になる。そのために適切な種子の保存、管理が不可欠になっている。
農研機構は35年前からジーンバンク事業を始め、遺伝資源センター(茨城県つくば市)を中心に全国のサブバンクに植物遺伝資源だけでも約19万点を保存してきた。
これらの種子は低温、低湿度の環境で保存することで寿命を長持ちできるとされる。しかしただ保存施設の中にしまっておけばいいわけではない。採種後の処理や保存環境が寿命に影響を与えることから、5年毎に発芽試験を実施して発芽率を一つ一つ確認してきた。発芽が悪くなったものは新しい種子と入れ替え、常に長持ちする遺伝子源として確保してきた。
-1℃、湿度30%の環境で保存し、30年にわたり5年おきに発芽率を調べた結果から主要な植物の種子寿命を推定した。一定以上の発芽率(保存開始時の発芽率85%、概ね65〜85%)を維持できる期間は、おおよそダイズが15年、コムギ20年、トマト30年、ソバ70年、キュウリが130年だった。
得られた発芽試験データは主要なものだけでも50種8万点に及んだ。これほどの発芽率データの収集、保存は世界でも珍しい。
保存してある全種子19万点の発芽率を調べるのは地味で人手もかかる仕事になる。今回の推定結果を参考にすれば、寿命の短い種子の再増殖のサイクルを短くできる。また長持ちのする作物なら試験サイクルを長くすることも可能で、効率的な種子保存事業につながるものとみている。