霞ケ浦の放射性セシウム濃度、夏高くなりながら減少―夏に底層の溶存酸素濃度の低下により底泥から溶出:国立環境研究所
(2020年11月24日発表)
(国)国立環境研究所は11月24日、福島原発事故から5年間、霞ケ浦の湖水中の放射性セシウム濃度を観測した結果、湖水と魚類に含まれる放射性セシウム濃度は夏に高くなり、季節変動しながらゆっくり減少しつつあることが分かったと発表した。
この変動については、夏に底層の溶存酸素濃度に著しい低下が起き、それに伴う底泥からの放射性セシウムの溶出が示唆されたという。原発事故被災地における淡水類の長期的な低濃度汚染の解明に役立つ成果が得られたとしている。
調査は2011年から2016年にかけ、霞ケ浦の3地点で実施した。水温や溶存酸素量などを定期的に測定するとともに、季節ごとに表層水を採水し、湖水中に溶存した放射性セシウム濃度を測定した。
その結果、いずれの地点でも、夏に表水温の上昇と底層(底から10㎝前後)の溶存酸素濃度の低下が確認された。底層のアンモニウムイオン濃度が夏に増加していることも認められた。アンモニウムイオンと底泥に吸着していた放射性セシウムがイオン交換することで水中に放射性セシウムが溶出することは先行研究によって知られている。
湖水中の放射性セシウム濃度は原発事故から1~2年で大きく減少し、その後、夏にわずかに高くなるような季節変動をしながらゆっくり減少していることも分かった。夏高くなるとはいえ、その濃度は飲料水等の基準値をはるかに下回っているという。
放射性セシウム濃度の変動に関する要因を解析したところ、底層の溶存酸素濃度と湖水中の放射性セシウム濃度との間に有意な相関(負の相関関係)が認められた。その結果、夏に底層の溶存酸素濃度の著しい低下が起きた際に、底泥から放射性セシウムの溶出が起こっていることが示唆された。
深い湖では夏の間、貧酸素あるいは無酸素状態が続くために底泥のアンモニウムイオンと放射性セシウムがイオン交換し放射性セシウムが溶出するが、今回の調査により、霞ケ浦のような浅い湖沼においても同様のメカニズムで放射性セシウムの溶出が起こることが明らかになったという。