世界最高性能の低反射・防曇特性の光学材料を開発―45度の反射防止限界を突破し60度の入射角を実現:産業技術総合研究所ほか
(2020年11月24日発表)
(国)産業技術総合研究所と東亜電気工業(株)は11月24日、光が反射しにくく、曇りにくい、ナノ構造体でできた世界最高性能の低反射光学材料を開発したと発表した。太陽電池表面における太陽光の反射を減らしたり、各種ディスプレーパネルの視認性を高めたりすることが期待されるという。
光を反射しにくくする技術として、近年モスアイ構造体と呼ばれる技術が知られている。これは、光の波長以下の周期を持つナノ構造により光の反射率を低減する技術。液晶テレビや一眼レフカメラなどで実用化されている。
研究グループは今回、このモスアイ構造体の性能を超える低反射特性と、防曇効果を併せ持つナノ構造体を開発した。
開発したのは、モスアイ構造体と同様の機能を持つ反射防止ナノ構造体の内部に、新たな構造体を形成するというもの。まず反射防止ナノ構造体を射出成形で作製し、そこに新開発した自己形成柱状成膜技術で柱状の構造体を形成する。
広い入射角範囲で低反射を実現でき、入射角45度の従来の反射防止限界をはるかに超える入射角60度を達成した。入射角60度での反射率はモスアイフィルムの7分の1と低い。
さらに、この技術は防曇性能も併せ持っている。ナノ構造体内部に親水性無機材料の柱状構造が形成されるため、超親水状態が長期間にわたって維持され、防曇機能が発現される。防曇特性の持続期間の大幅な向上が可能という。
今回開発した技術は、高い視認性と防曇性が要求される大面積曲面車載パネルへの適用をはじめ、曲率半径の小さい超広角レンズへの適用など、IoT技術への貢献が期待されるとしている。
東亜電気工業は産総研から大面積ナノ凹凸金型技術のライセンス供与を受け、大面積3次元ナノ構造金型量産製造ラインを整備、操業を開始した。ナノ構造体金型や成型品などを販売するという。