動物の体づくりに新たな仕組み―特定酵素の働き解明:筑波大学ほか
(2020年12月3日発表)
筑波大学と東京医科歯科大学は12月3日、受精卵が細胞分裂を繰り返して動物の体を形成する発生の過程で働く一連の遺伝子群を制御する新しい仕組みを解明したと発表した。血管や神経作りに関わるとされる特定の酵素が、肋骨(ろっこつ)の数などに影響することを明らかにした。生命現象の基盤となる体の形づくりの仕組み解明につながり、さまざまな病気の理解にも役立つとみている。
ほ乳類では、発生の過程で染色体上に並ぶ13個の遺伝子「Hox遺伝子群」が順番に働いて、左右対称の構造を保ちながら頭や脚、尾などが順序良く配置されて体を形作ることが分かっている。研究グループはこの発生の過程で働く酵素の一つで、神経や血管づくりに関わる可能性も報告されている「ヒストン脱メチル化酵素(Kdm7a)」の働きを詳しく調べた。
まず、遺伝子編集技術を用いてこの酵素を作る遺伝子を欠いたマウスを作成、通常のマウスと比較を試みた。その結果、13個のHox遺伝子群のうち体の後方部分を作るのにかかわる9番目以降の遺伝子が明らかに減少していることが分かった。さらに出生直後のマウスの骨のうち、胸椎(きょうつい)と腰椎(ようつい)および腰椎と仙骨(せんこつ)の境界が一つずつ後ろ側にずれ、肋骨の数が一つ増えていることなどが明らかになった。
この結果から、研究グループは「ヒストン脱メチル化酵素がマウス発生期にHox遺伝子群の発現調節を行うことで、前後軸の形成を制御する可能性を示唆している」とみている。また、この酵素が「がんや動脈硬化などの生活習慣病の発症や進展に重要であることが分かってきている」として、今回の成果ががんや動脈硬化など様々な病気の理解にも役立つ可能性があると期待している。