室戸岬沖の海底下生命圏の実態を解明―地球深部探査船「ちきゅう」使い国際共同で実施:海洋研究開発機構/高知大学/産業技術総合研究所ほか
(2020年12月4日発表)
(国)海洋研究開発機構、高知大学、(国)産業技術総合研究所などの共同研究グループは12月4日、室戸岬沖にある海底下生命圏の実態を解明したと発表した。地球深部探査船「ちきゅう」を使い南海トラフの先端が日本列島に沈み込んでいるその下に生息する微生物の実態を国際共同研究により明らかにした。
これまでに世界で行われてきた海洋掘削調査から地球表面の約7割を占めている広大な海洋の下(海底下)には推定4万種に及ぶ性状未知の微生物が生息する生命圏(生物が存在する領域)があることが明らかになっている。
しかし、海底下のどの程度の深さにまで生命圏は拡がっているのか、その限界の海底下とはどのようなところなのか、などといった根本的な疑問はまだ多くが未解明のまま残されている。
今回の研究はそうした科学的疑問を解き明かそうと2013年から開始された日米欧共同による多国間科学研究協力プロジェクト「国際深海科学掘削計画(IODP)」の一環として東京大学、京都大学、神戸大学とドイツのブレーメン大学、米国のロードアイランド大学などが参加して行われた。
サンプルの掘削を行ったのは、高知県室戸岬の沖160kmの南海トラフ先端部水深4,776mの地点。その海底から1,180m下までの堆積物のコア試料(柱状試料)を海洋研の「ちきゅう」を使って採取。先ず船上のX線CTスキャンで分析した後世界3大コア保管施設の一つとされている高知大と海洋研が共同運営する高知コアセンター(高知県南国市)に運び、海底下の堆積層中に生息している微生物の分布状態をはじめ水中の化学成分、堆積物の物性や温度などを詳細に分析した。
その結果、南海トラフ沈み込み帯先端部の海底下では、40~50℃と70℃付近の深度域が生命(微生物)の存続にとって重要な温度限界域であることを突き止めた。
そして、海底下1,180mの環境は120℃±3℃という高い温度になっており、110~120℃の堆積物と岩の境界域に超好熱性微生物が存在することを発見した。
研究グループは今回の研究で室戸岬沖の海底下生命圏の実態とその温度限界を解明できたとしている。
一般的に海底下は深くなるにつれて温度が高くなることが知られている。室戸岬沖の南海トラフ沈み込み帯先端部の温度は過去の研究から130℃を超えるのではないかと予想されていた。