温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)観測能力の高さを実証:国立環境研究所
(2016年9月23日発表)
(国)国立環境研究所(環境研)地球環境研究センターは9月23日、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)が3年前の2013年8、9月に得た中国北東部-朝鮮半島域と日本上空のメタンデータを解析した結果、2009~2013年夏季の平均値より約20ppb(ppbは10億分の1)高い高濃度メタンを検出した、と発表した。これだけの濃度増加が2カ月程度も続くのは特異現象という。
そこで、「いぶき」同様の原理で地上から上空までのメタン量を測定している全量炭素カラム観測ネットワーク(TCCON)の北海道(落石岬)から沖縄(与那国島)まで国内5カ所のデータを解析したところ、同様の高濃度メタンが観測されていることが分かり、「いぶき」の観測が正しいことが裏付けられた。
さらに、大気輸送モデルを用いた解析の結果、2013年夏季はアジア上空の気圧配置が例年と異なり、中国東部のメタン発生源地域から日本へ高濃度メタンが、あまり薄められずに送られていたことも分かった。いずれも「いぶき」の高い観測能力を実証した結果である。今後更に研究を進め、「いぶき」及びその後継機への応用を進める。
「いぶき」は環境省、環境研、宇宙航空研究開発機構の3者が共同で開発した世界初の温室効果ガス観測の専用衛星で、全地球の二酸化炭素とメタンの濃度を宇宙から観測し、その変動を明らかにすると共に吸収・排出量の推定精度を高めることを主な目的としている。2009年1月23日に打ち上げられて軌道に乗って以来、今も観測を続けている。