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植物体に振動を与えると農業害虫を減らせること確認―難防除害虫の新たな防除法として期待:琉球大学/森林総合研究所

(2020年12月8日発表)

 琉球大学と(国)森林総合研究所は12月8日、植物に振動を与えると、多くの化学農薬に耐性を持つ農業害虫タバココナジラミの密度を低減できることが明らかになったと発表した。難防除害虫の新たな防除法として期待されるという。

 タバココナジラミは、ほとんどの化学農薬に対して薬剤耐性を発達させ、暖かい環境では爆発的に繁殖し、様々な野菜、観葉植物、花き類を加害する重要農業害虫。成虫、幼虫とも吸汁して植物から栄養を奪い、吸汁の際にさまざまな植物ウイルスを媒介し、深刻な被害をもたらす。

 このため、耐性を引き起こす化学農薬とは異なる新たな防除技術が求められている。

 研究グループは、昆虫が、固体を伝わる振動や音を知覚して逃げ出したり動きを止めたりするなど、様々な行動を起こしていることに注目し、今回これを防除に応用できないか調べた。

 実験では、トマト24株を一株ずつ鉢に植え、園芸支柱を立てて一列に配列。6株を1セットとし、計4セットのうちの2セットの支柱列に横棒を渡し、横棒に加振器を取り付けてトマトの株に振動が伝わるようにした。残り2セットには横棒は取り付けず無加振とした。

 実験開始前にあらかじめタバココナジラミを一株当たり30匹ずつ放っておき、100Hz(ヘルツ)の振動を毎日7:00から18:00までの間、30分おきに、1秒加振、9秒休止というサイクルの刺激を1分間与えた。

 開始から5日ごとに各トマトの葉上に定着したタバココナジラミの幼虫と成虫数を調べた。

 その結果、加振した列では幼虫・成虫とも無加振の列に比べて減少しており、そのうち加振した列の幼虫は、無加振の列に比べ約40%減少していた。成虫は、加振列が無加振列に比べ約26%減っていた。

 今回の実験で、植物体に振動を与えるとタバココナジラミの個体数を減らせることが明らかになったことから、研究グループは今後、加振器を改良したり、振動の伝達方法やタイミングを工夫するなどして防除効果を高め、実用化につなげたいとしている。