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日本南方沖の30℃を超す異常な海面高温が、今後「8月の常態」になる―頻繁な豪雨や台風の被害、サンゴなど海洋生物への影響が危ぶまれる:国立環境研究所

(2021年1月14日発表)

 (国)国立環境研究所地球環境研究センターの林未知也特別研究員らの研究チームは1月14日、昨年8月に発生した日本の南方沖海面の異常高温の発生要因を分析した結果を発表した。21世紀半ばまでに30℃を超える異常高温が、2年に1回以上の割合で頻繁に発生し、新たな「8月の平年常態」となる可能性が高いと警告。日本付近での豪雨や台風の発生につながり、サンゴなど海洋生物への悪影響も危惧されるとしている。

 海面温度の上昇が20世紀半ばから地球全域で進行している。人間活動に伴う温室効果ガスの増加であると、これまでの数値モデルの解析で知られている。温暖化の進行を抑えるには、北西太平洋の地域的異常高温がなぜ起きるかを定量的に知る必要があった。

 研究チームは、北西太平洋の海面水温が、昨年8月の未曾有の異常高温を超えるような状態が今後どんな確率で起きるかについて統計的に見積もった。気象庁気象研究所が所有する地球全体の海面水温の長期客観解析データ(1901年から2020年)をベースにした。

 平均気温の上昇は、自然変動(大気汚染物質や火山噴火、太陽活動など)と人間活動によるものが含まれている。この中から人間活動の影響だけを取り出すため、世界各国が開発した31件の最新の気候モデルの集合(アンサンブル)を使った。

 30℃を超すような温暖化シグナルはアンサンブルの中央値(2年に1回は超える値)にあり、年々起こりうる変動幅は95%発生確率幅(20年に1回は起こる範囲)として算出される。

 その結果、次のようなことが判明した。

 ①昨年8月の異常な海面水温は、全ての観測データからも観測史上最高だった。②過去の再現実験の結果は1901年から2020年までの観測値と矛盾がなかった。③産業革命前(参照実験)の変動幅を大きく超える海面水温は20世紀中には観測されず、2010年以降になると度々発生した。

 気温上昇は温室効果ガス(昇温)と大気汚染物質(冷却効果)のバランスによるが、1980年代以降は昇温効果の方が強かった。加速的な昇温の結果、2010年には記録的な異常高温が発生しやすくなった。温暖化が進んだ現在の気候であればこれからも異常高温は十分に起こりうると結論づけた。

 また、異常高温が発生する確率の変化を見積もった。20世紀間は極めて低く、過去再現実験から約600年に1回と見積もられた。2001年から2020年での発生頻度は15年に1回と増えた。

 予測シナリオ実験から、2031年から2020年には異常高温状態が8月の新たな平常状態(2年に1回以上発生)となることが予想され、28℃を超える暖水域が日本や朝鮮半島、インド西海岸、米国東海岸、ハワイ諸島西方沖を覆うほどに拡大する可能性があるという。

 これらの地域では熱帯低気圧の強化などによって自然災害の変化や、珊瑚などの海洋生物への悪影響が危惧される。パリ協定の目標である1.5℃や2℃にたとえ抑えられたとしても、北西太平洋の暖水域の拡大と被害は免れない可能性が高いとしている。