広葉樹の「遺伝的ガイドライン」を解析―ミズナラを対象に遺伝子型と成長を比較:森林総合研究所
(2021年1月14日発表)
(国)森林研究・整備機構の森林総合研究所は1月14日、広葉樹の植林で提唱されている「遺伝的ガイドライン」について解析を行ったと発表した。
広葉樹の植林は、緑化や山地防災といった環境保全などを目的に日本各地で広く行われているが、その地域に特有の遺伝的特性に影響を与えないことが求められる。このため用いる苗や種子は植える地域の目的の広葉樹と遺伝的に近縁であるものが求められ遺伝的ガイドラインが提唱されている。
だが、ガイドラインの有用性を実証するには実際に植えて複数世代にわたって観察し分析を加える必要がある。
今回の研究は遺伝的ガイドラインの有効性を検証する一環として環境保全のために広く各地で植林されている広葉樹の一種ミズナラを全国19の産地から収集して北と南の試験地に植え地元由来の植栽木とそれらよそ(他所)由来の植栽木の遺伝子型を比較した。
北は北海道大学北方生物圏フィールド科学センター森林圏ステーション、南は鳥取大学農学部附属フィールドサイエンスセンター教育研究林をそれぞれ試験地にして北海道から九州までの19の産地からのミズナラを両試験地内に植えてそれぞれのミズナラに実ったどんぐり(ミズナラはどんぐりが実る代表的な樹種)から生じた芽の遺伝子型を調べた。
その結果、南北いずれの試験地においても地元と他所のミズナラは遺伝的に分化(分かれていくこと)し、両試験地共地元のものの方が約40%も成長が良く、交雑(異種交配)が起こっていることが分かった。
こうした解析結果が得られたことから広葉樹の植林では地域に適応した遺伝的ガイドラインを守ることが大切であることが確認されたとし、「今後多くの広葉樹の種で遺伝的ガイドラインを確立する必要がある」と研究グループは語っている。