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レム睡眠で働く神経細胞―睡眠障害に関与も:筑波大学

(2021年1月14日発表)

 筑波大学は1月14日、突然強い眠気に襲われる睡眠障害「ナルコレプシー」の発作に伴って全身の筋肉が脱力する際に働く脳の神経細胞を突き止めたと発表した。夢を見ている状態のレム睡眠時と同じ神経回路が筋脱力に関与していることをマウスの実験で突き止めたもの。ナルコレプシーや睡眠中に無意識のまま動き回る夢遊病などのレム睡眠行動障害の治療法の開発などにもつながるという。

 仕事中や歩いているときでも突然強い眠気に襲われるナルコレプシーで、全身の筋肉から力が抜ける症状「カタプレキシー」が起きることがある。一方、レム睡眠では不規則な眼球運動を示しながら、全身の力が抜ける脱力状態が起きる。櫻井武教授らはこのカタプレキシーとレム睡眠の筋脱力に何らかの関係があるのではないかとみて、マウスによる実験で解明を試みた。

 その結果、レム睡眠とカタプレキシーに筋脱力を起こす信号は共通しており、その信号を出す一連の神経細胞(ニューロン)が脳の延髄腹内側と呼ばれる領域に存在することが分かった。この神経細胞群は体の筋肉を動かす神経細胞の働きは抑制するものの、眼球運動を担う神経細胞の働きは抑制しなかった。一方、その神経伝達回路を阻害してやると、レム睡眠時の筋脱力は起きなくなった。

 これらの結果から、櫻井教授らは「レム睡眠とカタプレキシーの筋脱力が共通の神経回路によって生じていることが分かった」として、レム睡眠中に異常行動を起こす疾患などの治療法の開発に役立つとみている。