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温暖化に対応するスーダンのコムギの収量増加策を推計―人口増と消費量増加で、主力の高温耐性コムギの収量を2.7%増やす必要がある:鳥取大学/農業・食品産業技術総合研究機構

(2021年1月14日発表)

 鳥取大学乾燥地研究センターと(国)農業・食品産業技術総合研究機構は1月14日、温暖化の進行に合わせてアフリカ・スーダンの高温耐性コムギの収量を年間2.7%増加する必要があるとの推計結果を発表した。世界各地のコムギ育種機関が、今後、高温耐性品種の開発目標を決める上で役立つとしている。

 農研機構は、スーダン農業研究機構のもつ栽培試験データを使って、現地で広く栽培されている高温耐性の2つの品種「デベイラ」と「イマム」の生育と収量をコンピューター上でシミュレーションした。モデルに将来の気候シナリオを入力し、予測された今世紀半ばの気温と収量の関係を2品種、3地域について明らかにした。2050年に、最も気温上昇が小さい場合は+1.5℃に、大きい場合は+4.2℃に耐えうる品種を想定している。

 スーダンのコムギは世界で最も高温条件で栽培されている。年間の気温が比較的低くなる11月から3月のシーズンに栽培するが、この間の日平均気温は17℃から35℃になる。生育期の平均気温が高いと収量が落ちることから、温暖化の進行に伴って収量減少がどれほどになるかを想定した。

 「+4.2℃シナリオ」では、イマムの生育期間の平均気温が1℃上昇した場合は収量が現在よりも51.1%減少するとの結果が出た。現在の収量と同じにするには、イマムよりも2.7%高い高温耐性品種が毎年、開発される必要がある。

 「+1.5℃シナリオ」では、気温1℃上昇あたりの収量低下は34.6%になる。年間の気温上昇量は0.008℃のため、新たな品種に求められる毎年の収量増加は平均で年間0.3%に抑えることができる。

 スーダンでは年々コムギの消費量が増加している。2000年に110万t(トン)だったのが最近では300万tにまで急増した。人口は現在の3,300万人が2050年には8,000万人に達すると予想され、コムギの需要も現在の2倍の570万tに増加する見通しがある。

 コムギ自給率は約20%しかなく、需要増加と温暖化に対応するには高温耐性品種のコムギの開発が急がれる。

 乾燥地研究センターはスーダン農業研究機構と共同で、コムギ近縁野生種由来の遺伝子により、遺伝的多様性を増やした系統を利用して高温耐性コムギの育種事業を始めた。

 今回の研究ではデベイラとイマムを考慮したが、あらたな品種を加えてのシミュレーションも可能になるという。